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3-6 ミナミがネギ背負ってやってきた。

せっかく会えたのにもうお別れをしなくてはならないなんて。 辛すぎてミナミは泣きそうになりながら彼の服の裾を掴んでよろよろと歩いた。 「ほくとさん....おいてかないで...」 服を剥ぎ取る勢いでガッツリと掴んでいながらミナミはそう懇願した。 袖野はため息をつきながら振り返り、頭を撫でてくる。 「置いていかんし、泣かんの」 お母さんのようなことを言われ、ミナミは思わず彼に抱きついてしまった。 困らせているのは分かっているが、こればかりは仕方ない。 「帰りたくない....」 彼の胸の中でボソリと呟いた。 ここにずっと居たい。この香りをずっと嗅いでいたい。 彼に会う度にそんな想いが増してしまう。 こんな道端なのに、引き剥がすでもなく頭を優しく撫でてくれる。 そんな優しい恋人に甘えてしまっている。 泣かんのと言われたがミナミは寂しくてちょっとだけ泣いてしまっていた。 「あのなぁ...ボクがどんだけ怖いおじさんなのかいい加減知って欲しいんやけどな」 そっと両肩に手を置かれ身体を離されてしまう。 怖いことなんてないのに。 ミナミは呆れさせてしまったことに若干の後悔を覚えながらも片手で涙を拭った。 「ごめんなさい...」 「ほんまに。閉じ込めたくなるから、駄目だよ」 耳元で低い声が、して、 どきんと心臓が飛び跳ねた。 「…オレ...、とじ、こめられたい....っすよ....?」 考えるより先に口が勝手に願望を告げ、 彼は深いため息を零した。 いつの間に至近距離にあった彼の顔が、静かに微笑んでいて ミナミは顔も身体も発火したように熱くなってしまった。 「君はほんと、困った子だね」 なんでこの人はいつもこう、色気が大爆発しているんだろう。 およそ不毛な質問を投げかけることは叶わず、 ミナミの意識は宇宙の彼方のさらに果てまで飛んでいってしまうのだった。

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