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3-14 しない

「.......オレは...ほくとさんのこと、こんなに...欲しいのに...」 ぼそぼそと自分の掌の中で愚痴をこぼして、彼の手から逃げるように身を捩った。 気を遣わせてしまったことも 自分一人だけ舞い上がってしまったことも恥ずかしかったし こんなに色々してもらったのにまだ足りないだなんて甘えてるだろうかと思うけど。 それでもミナミは少し怒っていて、 何が愛してるだ!ばーか!という具合には拗ねていた。 「鈕?」 名前を呼ばれてもミナミは返事をせずに身体を縮こめて しくしく泣いていた。 何度呼ばれても返事をしなかったので、諦めてしまったと思いきや やがて袖野はミナミの身体を簡単に持ち上げて 膝の上に座らされてしまった。 「返事ぐらいして欲しいな」 彼が優しく微笑んでいて、ミナミは思わず許しそうになったが その顔には騙されないぞと眉間に皺を寄せて彼を睨んだ。 袖野の長い指が頬を拭ってきてもミナミは逃げるようにそっぽを向いた。 果てたばかりなのに身体は熱いままで、だから離れていたいのに。 残酷な恋人にミナミは腹が立っていた。 「なにを拗ねてるの君は」 「しないなら...、最初からそう言えばいいのに」 「うーん…そうだなぁ…君を見てるとそうしたくなるよ」 「え……」 そんな風に言われるとミナミは顔が熱くなるのを感じながら、 逃げたくて暴れるが彼はビクともしなかった。 「ううう、もう、..嫌い...っ!離してください!」 どうにか逃げようとするが、簡単に捕まってやがてうつ伏せにベッドに押し付けられてしまった。 犬でも捕まえるような感じであったが、ミナミはシーツに突っ伏したまま、なんだかすごく惨めな気分だった。

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