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3-22 美しい恋人達
早朝の朝日は眩しく、ラブでホテルな場所から追い出されるように2人は外に出た。
ミナミはどこかまだフラフラしていて、
よろけて転けそうになっていたので思わず袖野は彼の腕を引っ張って支えた。
「大丈夫か?」
「ふへへ...」
ミナミは変な笑い方をしながらも見上げてくる。
そもそも年下相手に抑えきれない自分も悪いのだが
分かっているのか分かっていないのか、こちらを煽ってくるような彼には困りものである。
贅沢な悩みなのかもしれないが。
「これに懲りてあんまり挑発せんことやで」
少しやり過ぎたとはいえお灸を据えるつもりだったので、
彼が自粛してくれるならまあいいだろう。
しかしミナミはぼけっと口を開けている。
「?オレはもっとされたいです」
平然と答えるその男に、袖野は一瞬固まったのち
深いため息を零して頭を抱えた。
「...あかんかったか…
まぁ若いからなぁ〜…どうしたもんか」
全く、少しはおじさんの気持ちも考えて欲しいものである。
こうやってなんでもない事でもついつい思い悩んだりもするから。
「ほくとさん」
「ん?」
朝日に包まれたその姿はボロボロのヨレヨレで、
無残なサラリーマンといった感じだった。
きっと自分もそうに違いない。
ボロボロのヨレヨレで、
また今日も理不尽な重圧に押しつぶされる事だろうけど。
だけれど多分、いま
「だいすき」
僕達は
世界で一番美しい恋人なのかもしれません。
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