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4-1 生きてる人間の方が怖い
※メインストーリーの
左右関係。ヨコナナメなあなた
第4章まで読んでから読むことをおすすめいたします。(読まなくても大丈夫ですが時系列的にはヨコナナ4章の後の話となっております!)
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出版社の1番薄暗い部屋に官能小説雑誌、特選Novelsの編集部は存在していて
そこに詰められているおじさん達は皆一様に気味の悪い顔で
毎日毎日、変態と変態が書いたものに囲まれる日々を送っている。
編集部は机が3つずつ向かい合わせに並んでいて、
最近新人が入ったので右側には無理矢理4つ目が増設されている。
一番奥の窓際には編集長の机がどでんと偉そうに置かれていて
平社員は肩を並べて向かい合って仕事をしているわけだが
本来は隣同士になんていたくもないしそれこそ生気のないおっさんの顔なんか1ミリも見たくないので互いに要塞のように無駄にでかいパソコンのデスクトップやら
本やらを山積みにしているのであった。
袖野の席は左側の一番端で、比較的要塞は質素な方だった。
「いやぁ平和平和」
おっさんその1がニヤニヤと笑いながら呟いた。
「そうなんですか?」
新人は机の上に山積みされた特選のバックナンバーを読み漁りながら
どこか寝不足の目をそちらに向けた。
「編集長キレてないし」
「今日なんかご機嫌だったよなぁ」
おっさんその1とその向かいのおっさんその2は今は不在の編集長の話をしている。
確かに今日は随分と余裕を持って仕事に取り組めていて
こういう平和な感じが毎日続けば良いのになぁ、などと思ってしまうくらいだった。
「なんか週末息子さんに会えるらしいですよ」
袖野の隣で前担がのほほんと呟いた。
バツイチの鬼編集長はなかなか一人息子に会わせて貰えないらしかった。
「前担にだけよな、そういう話するの」
「えー?そうかなぁ」
割とふくよかな体型の彼は顔も性格もその体型と同じく丸く穏やかで
鬼の編集長も彼にはついつい愚痴を溢せるのだろう。
そうそう、差別よな、とおっさん達が喋っていると
視線を感じて、袖野は編集部の入り口のドアに目をやった。
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