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4-4 どうせ変な奴しかいない
非常に重たい足取りで、袖野は同じ建物内でありながらもあまりこないフロアへと足を踏み入れた。
主に女性をターゲットにしたものを扱う部署が集まっているこのフロアは、
社員も圧倒的な女子率を誇っており、早々に帰りたくなってしまうのだった。
まるで監獄のようにそれぞれが隔離させられている自分達の部署があるフロアとは違い、あまり仕切りもなく風通しのいいフロアは
全体的に明るく感じたし、隣部署の社員同士で楽しそうに喋ったりしていて
本当に同じ会社かなと袖野は思ってしまう。
このような華やかな場所に来ると、
あの気持ちの悪い薄暗いおじさん達の巣窟の方が、やはり自分のいるべき場所らしいと思い知らされもする。
エレベーターの前で絶望していると、
ショートボブの女性がこちらへ近付いてきて笑顔を向けてくる。
「袖野さん、ですよね?」
「あ、はい…」
「特別sentimental編集長の久森です」
女性はそう言いながら首からぶら下げた社員証を見せてきた。
しっかりとメイクを決め、華やかな色合いのドレスシャツに白いパンツ。
明るい茶色に染めた短い髪にその隙間から覗くキラキラ光る大振りのピアス。
息子に会えなくて死にかけている無精髭の鬼編集長とは対極だった。
「特選Novelsの袖野です、この度はどうも…」
同じ官能小説界隈とは思えない彼女の煌びやかさに
袖野は変な笑顔を浮かべてしまいながらも、頭を下げて挨拶をした。
「こちらです、どうぞ」
久森は優雅な仕草で片手をフロアの方に差し出し、袖野は無駄にペコペコしてしまいながらも彼女について行った。
すれ違う社員も全員女性で、なるべく気配を殺しながら久森についていくのだが
自動販売機よりもでかいその身長のせいで、袖野はどうしても視線を集めてしまっていた。
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