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4-5 どうせ変な奴しかいない
「袖野さん、噂は聞いてますよ〜ヒットメーカーなんですってね?」
「いやいや…、天才作家の担当にたまたま当たっただけですよ」
またまたぁ、と久森は返してくれるのだが
自分がヒットメーカーなどと言われている恐ろしさに袖野は内心震えているのだった。
出世したらどうしよう…、と常日頃から怯えている袖野は今回の件も編集長の後任なすりつけ大作戦の一環なのではなかろうかと疑って仕方ない。
「どうぞ、こちらです」
彼女に続いて目的の部署へとやってきた。
4つの机が向かい合わせに並んでいて、仕事をしているのは全員女性だった。
おじさん達の机とは違い全体的に華やかな色合いの物がちらほらと見受けられて
本当に官能の部署なのだろうか、と勘繰りたくなってしまう。
簡易的な仕切りで区切られた空間に通されると
向かい合うように一人掛けのソファとテーブルが置かれている。
袖野は促されるままソファに腰掛けた。
「女性だけなんですね…」
「ええ。特別sentimentalは、女性による女性のための官能世界ですから!」
「なるほどぉ…」
胸を張って答える久森の活力に、雲泥の差やな、などと思うのであった。
「本当にうちと合同なんて大丈夫です?」
「ええ、もちろん。
一度やってみたかったんです“本格官能小説特集”!
だって折角同じ会社に特選Novelsがあるわけですし
特セン×特選、絶対企画したくって!」
特別sentimentalは女性向け官能小説を軸にしたWebマガジンだが
ボーイズラブやティーン向けというよりも少しターゲット層の年齢が高めのものらしかった。
女性向けにしては濃厚仕様らしいが、特選に比べると綺麗さすら感じてしまうので
あんまり特選色を出すとクレームが入りそうな案件であった。
久森は妙にやる気のようだが、袖野にとってはまた胃が痛みそうな仕事に感じていた。
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