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4-14 見つけちゃった

結局、死に物狂いで取り返した書類は犬の歯形がついたまま。 先方にどうにかハンコは押してもらえたものの、会社に戻ってくる頃にはズタボロだった。 ミナミは狭い視界の中へらりと笑って、床に両膝をついて書類を課長に差し出した。 「…すんませんっした……」 「ミナミ…」 課長は腕を組んだまま、その冷たい瞳でミナミを見下ろしてきて 全身に走る痛みよりもその眼差しの方が辛いような気がしてミナミは床を見つめた。 「大事なやつって言われてたのに…ごめんなさい…」 どうしてこうなってしまうのだろう。 泣きたいような、だけど泣いたって何も解決しないことがわかっているからどこか諦めのような気持ちだった。 真壁はため息をつきながら書類を奪い取ると、ミナミと目を合わせるようにしゃがんで顔を近付けて来る。 「誰にやられた」 「え…?」 「誰にやられたかって聞いてんだよ」 真壁の目はどこかギラギラしていて、ミナミは思わず怯えながらも小さく笑った。 「いや、…あの、転けたんです…階段から、その、百段ぐらいあるとこから」 誤魔化していると、真壁は無言で睨んでくる。 その圧に、ミナミは再び俯いた。 「…オレが悪いんです……」 掻き消えそうな声で呟くしかない。

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