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4-16 毒を喰らわば

パンケーキを山ほど食わされ女子に囲まれた所為か、特選の男所帯の編集部に戻ってきた時には心底ほっとしてしまった袖野であった。 いつも色が無さすぎるとうんざりするぐらいなのに、おっさんの小汚い声やしょうもない会話には妙に安心してしまう。 「おかえりー袖野っち。どうだった」 「甘いものはもう二年いらん…」 袖野が自分のデスクに倒れるように座ると男達は山賊のようにゲラゲラと笑っている。 「いーなー女の子に囲まれてカッフェなんて」 「特別sentimentalの久森ちゃんちょっと可愛くね?」 「えーそうかぁ?」 腹の立つ会話を聞いて心の中に芽生える殺意に、これこれ、というまるで実家に帰ってきたみたいな気持ちさえしてしまう。 砂糖と甲高い声に浸食された頭をどうにか動かして、打ち合わせた内容をまとめながらも なんだか妙に身体が塩気のあるものを欲してしまって、袖野は携帯端末を取り出した。 ミナミに、ラーメンいかんー?と誘ってみる。 なんだかちょっと心が擦り減ったので、癒しを求めてしまっている自分がいたのだ。 特選は幾ら実家感があるとはいえ所詮毒の沼である。 毒で毒を中和させているだけに過ぎないのだ。 「でも女版特センってよくわかんねえよなー」 「なー。書いてるのも女の子なんでしょ?」 「そもそも女子が読みたいんかなこんなん…」 向こうはちゃんとチェックしてくれているのにおじさん達はこの体たらくである。

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