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4-17 毒を喰らわば
「分かってないですねー女の子版の官能小説って濡れ場がめーっちゃくちゃ長いんですよ。あれは女子の願望ですよ
それにイケメンが出てきて、とんでもないセックスアピールとかされるんです!」
新人が急に意見を出してきて、おじさん達は若干引いたように苦笑している。
「なんでそんなん知ってんの」
「ちゃんと読んでるからですよ!」
「えらー、じゃなくて。えろー雲川くん」
「エロいのはみんなそうでしょ!」
新人雲川は憤慨しているが、彼はちゃんとチェックしているらしくもしかすると若い子達がただ勉強熱心なだけかもしれないと思う袖野だった。
そうこうしているとミナミから返事が返って来る。
“ごめんなさい。今日残業なりそうで無理そうです”
という断りの返事だった。
「ん…?」
なんだかいつもとテンション感が違う気がして、その絵文字のない感じもそうだし、シンプルな返答も不思議だった。
本当に忙しいのかもしれないけど、いつものミナミならもっとテンション高めに、
本当は行きたいし会いたいし大好きなんだけど、と聞いてもいない理由を書き連ねてきそうなものだが。
だが追求してもしょうがないので、そっかー。仕事頑張ってー、と軽い感じで返しておいた。
それ以降は既読がついただけで、意味深に手首に刃物を当てている感じのウサギのスタンプも送られてこないし
袖野は不思議に思いながらもちょっとだけ残念な気持ちを押し込めて仕事に戻ることにした。
寂しいけど、ただでさえ彼には甘えてばかりなのだし。
ミナミの会社はこの編集社の比じゃないくらい大変なブラックらしいと聞くし。
あののらりくらりと上手いことサボっていそうなミナミでもさすがに大変なのだろう。
今度何か労わってあげようかなと思う袖野だった。
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