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4-19 へんな子
心に、ずっとモヤがかかっているみたい。
ミナミはここの所若干憂鬱気味だった。
ボコボコに殴られた所為で顔はずっと腫れているし、自分で見ても酷い有り様だなと思うレベルなので
歩くために誰かに、どうした!?と聞かれてしまう。
動かすと痛いからあんまり喋れないし、動作もゆっくりになってしまって周りに気遣われる毎日だ。
それは余計に憂鬱に拍車をかけてしまっているようだ。
別に元から自信満々だったわけじゃないけど
なんで自分はこんなにダメなんだろうとついつい思考がマイナスに偏っていって、イマイチ気持ちが持ち上がらず
顔も酷いことになっているのを見られたくなかったし、
なんだか袖野に会うのが気まずくて結局ミナミは連絡が出来ずにいた。
それなのに袖野は他愛のないラインを送ってきてくれて、こんな素敵な人と居ていいのかなというように卑屈に考えてしまうのだ。
嫌われたくなくて、何かと会わない口実を探してしまっている日々だった。
だけど幸い仕事が忙しくて、本当に残業も余儀なく、疲れすぎて帰ったら速攻寝てしまうような事も多かった。
最近は他部署の人間も頻繁に訪れてわちゃわちゃやっていて、それは今日も例外ではなかった。
だけどミナミは、怪我の痛みと寝不足の合間って口数少なく淡々と画面に向かっていた。
他部署の男と雨咲と真壁課長が押し付けられたというイベントの話をしているらしい。
「えーとだから大体128でしょ、それが72必要だから…」
「計算機…計算機…」
「9216…」
「え?」
「128×72…なら9216」
「……。」
シーンとなってしまってミナミはぼけっと顔を上げる。
三人はなんとも言えない表情でこちらを見下ろしていて、ミナミはため息をつきながら画面に向かった。
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