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4-22 教えて上司
「………あのぉ…真壁さん…」
「はい…?」
「その……ミナミくん…、元気…ですかね?」
袖野が怖々と聞くと、真壁は少し驚いたような顔をしている。
そして考えるように腕を組んだ。
「やっぱり……」
真壁も何か思うところがあったらしくそんな事を呟いている。
「…喧嘩でもしたんですか?」
「いやぁ…ボクはそんなつもりなかったけど…
なんか怒らせたかなと思って…」
「袖野さんが?
あいつがなんかしでかしたのかと思ってたんですが…」
「まさか…」
ミナミが何かしでかしたり様子がおかしいのは今に始まった事ではなかったが、
真壁の様子から察するにミナミは最近何か変なのかもしれない。
「…最近あいつはやけにおとなしくて優秀すぎるのでおかしいと思ってたんですよね…」
「そうなんすか…?」
「余計なこと言わないし、計算も早いし理解力もあって
この前のプレゼンでは人が違えたみたいにハキハキ喋ってたし…
是非そのままであってほしいと思うけど…
優等生なミナミはミナミじゃない感じもして…」
「ど、どういうこと?」
意味不明な事を言っている真壁に袖野は苦笑してしまう。
「やっぱり殴られて頭が元に戻ったのか…?」
「え?」
「…この前…明らかに一方的にやられただろっていう怪我して帰ってきて…
そこからなんですよね…あいつが元に戻ったのは…」
「元に戻ったというと?」
「うーん…ミナミは元々凄く頭良いはずなんですよ…
就職試験の筆記、1位通過でしたし。
短大も首席卒業だったって聞いてます」
「え?マジ?」
「まあほとんどの人間が忘れてますけど…」
「…ま、マジ?」
真壁の証言には誰の話かと思うくらいだったが、彼が冗談を言うようには見えないので本当のことなのだろう。
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