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4-26 この気持ちは
「はー…!終わった終わった!」
夕暮れ空に両手を突き上げるように裾川が伸びをしている。
大型の催事場を背に、お荷物課の4人は今日1日の疲れを労いあっていた。
ここ数日は激動だったが、遂に例の押し付けられたイベントをどうにか乗り越えたのだ。
「慣れない事で戸惑いましたけどなんとかなりましたね」
雨咲が眼鏡を押し上げながら呟いている。
「でもちょっと文化祭みたいで楽しくなかった?」
「あの真っピンクのブースすごかったですよね…」
「ね〜!異世界から来たのかと思った」
雨咲と裾川は何故か盛り上がっているがミナミはぼけっと彼らを見ながら紙袋に入った荷物を抱えていた。
「みんなのおかげでどうにかなった。ありがとう…」
同じように荷物を持った真壁は、少し申し訳なさそうにしている。
「休日返上だし…俺が押し付けられなければこんな事には…」
「何言ってるんですか!真壁課長のせいじゃないですよ」
「そーそー。専門外でもなんとかしちゃう俺らスゲー!って思おうぜい
ねー?ミナミくん」
「……うん」
話を振られてミナミは静かに頷いた。
実際に本当にそうだと思うのだ。
営業部や広報部や企画部がしなければならない仕事を、結構上手くこなせてしまったのも彼らの実力で
それは普段押し付けられている仕事だってそうなのだ。
彼らが卒なくこなせる人種だからこそ罷り通っていることで、とミナミは分析していた。
「……あの…」
「ん?」
「どうした?」
ミナミは口を開きかけたが、誤魔化すようにへにゃりと微笑んだ。
「……い、いや…なんでもないっす…」
自分の頭に浮かんでいる事を伝えたって、きっとまた困らせるだけだろう。
ミナミは荷物を握りしめる。
「ミナミくん元気出しなよ〜?」
「…そうですよ。おとなしいミナミさんなんて気色悪いだけです」
「へへ…」
顔の腫れも随分引いてきたし、自分では元気なつもりだったが
彼らに気遣われてしまうと笑って誤魔化すしかない。
どうして自分の心がこんなに重たいのか、原因は色々あるけど
だけど根本はきっと自分の所為なのだろうとミナミは分かっていた。
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