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4-27 この気持ちは

裾川と雨咲と別れ、ミナミは真壁と共に荷物を置きに一度会社に戻るべく歩き出した。 「……袖野さんが…、心配してたぞ…」 「…え?」 隣を歩くヨコを思わず見上げてしまうと、彼は複雑そうに眉根を寄せている。 「何か…思うことがあるんだとして、ちゃんと話したのか?」 「…いや……えっと……」 ミナミは唇を噛み締めて思わず俯いてしまう。 「……オレ…なんか……、自信がなくて…」 「…自信…?」 「ほくとさんのこと好きで…好きすぎて… もしも否定されたら…オレのこと…じ、邪魔だって…思われてたら…」 自分で言いながらじわりと視界が滲んでしまう。 ミナミは慌てて腕で目を擦った。 「課長とほくとさんが仲良いのもなんか…、なんだろう… 胸のとこ変な感じがします」 自分の知らない所で、二人は何を話したんだろう。 そもそもいつ会ったんだろう。 考えるとモヤモヤが加速して行ってしまう。 真壁はため息を溢した。 「なんで俺に嫉妬するんだよ…そんなに好きなんだったらちゃんと離さないようにしとけ?」 「……嫉妬…?」 「お前の好きな人はそんなに心が狭くて浮気性な人なのか?」 じろりと彼に睨まれて、ミナミはその切れ長に輝く瞳を呆然と見つめ静かに首を横に振った。 そんなわけがない、と思ってしまう。 彼はあり得ないくらい優しくて、なんでも許してくれて。 好きだって言ってくれて。 「お前の話を頭ごなしに否定するような人か?」 「違う…」 「だったら…ちゃんと思ってることを話せ。 そうやって信じるのが好きってことじゃないのか?」 信じる。 胸の中のモヤモヤが急に涙になって溢れてきそうで、奥歯を噛み締めながら夕陽に照らされた上司の整った顔を見つめ続けていた。 ほくとさんに会いたい。 単純な脳がそんな欲求を感じ始めてしまう。 「課長……一生ついていく…」 「はぁ…?何を言ってるんだ…全く…」 彼は呆れながらもかしかしと頭を掻いて、行くぞ!と言いながらさっさと歩き出してしまう。 ミナミはその背中を追い掛けながら、なんだか一人で思い悩んでいたのが急にバカらしくなってしまうのだ。

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