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4-31 課長フィーバータイム

「ミナミ」 後ろから呼ばれて半泣きのまま振り返ると、真壁に荷物を押し付けられてしまった。 「え…?課長…?」 真壁は見たこともないくらい爽やかな笑顔を浮かべていて、ミナミは思わず息を呑んでしまう。 「ちょっといい?」 「なんじゃい!次から次に!」 「この前うちの部下がすげー顔腫らして青アザ作ってきたんだけど あれってお前ら?」 「だったらなんじゃ!同じ目に合わせたろォか!」 真壁は笑顔を浮かべたまま、そっかー、と頷いて袖野を見上げた。 「袖野さん、ミナミと先行っててもらえます? 俺はこの方々とお話ししてくるので」 「え…でも……」 「どうせ俺はお邪魔でしたでしょうし??」 「いや…あの…すんません…」 「仲間やられた落とし前はつけとかないと。 舐められたままにしとくわけにはいかないですから」 「ひぇ…っ…」 瞳孔が開き切った眼で睨まれて、さすがの袖野も怯えている。 「か…課長…あの…」 「安心しろミナミ。ちょっと遊んでくるだけだから。 仇はついでだよ!」 普段は死んだ表情筋を晒している真壁は意味が分からないくらい楽しそうな笑顔を浮かべていて ミナミは恐ろしすぎてこくこくと頷きながら袖野の服を引っ張って後退りする。 「よ……よし行こう!ミナミくん!できるだけ遠くへ!」 「う…うん……!」 二人は駅へと走り出す。 「あ!コラ待たんかい!」 「俺がいるのによそ見しないでもらえるかな?」 「ちょ…あ…え?」 なんだか凄い音が鳴っている気がしたが、 後ろを振り返ることは出来ず二人は全力疾走するのだった…。

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