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4-32 覚えたての感情
「はー…走ったぁ……」
駅前まで走り抜けてきたミナミと袖野二人は、ようやく足を止めた。
途中で袖野は半分荷物を持ってくれて、ぜえはあと息を切らせながらも一緒に来てくれて
ミナミは泣きそうになりながら彼を見つめた。
「あの…ほくとさん…」
「ん…?」
「ごめんなさい…オレ…、ほくとさんを困らせてしまって…」
ミナミが俯きがちに頭を下げるようにして謝ると袖野は、んー、と口を歪めている。
「…困るんは別ええけど…心配させんのは、ちょっとなぁ」
そう言って彼は、優しく頭を撫でてくれた。
「知らん間にこんな怪我しとったり…
それを教えて貰えんってちょっと辛いよ」
「なん…で…?」
「なんでって…ミナミくんのことやったらなんでも知りたいやん…なんでも相談してほしいし…」
その大きな掌に撫でられて、優しい眼差しで見つめられて
ミナミはついに我慢していた涙が溢れ出してしまった。
「ボクがなんか…愛想尽かされたんやったとしても
ちゃんと話して欲しいよ」
「…っ…違うんです…オレ…嫉妬したんです」
「嫉妬?」
「ほくとさんが…ほくとさんがもし……」
ミナミは泣きじゃくりながらも彼を見上げた。
そしてここ最近ずっと胸の中を滞留していたモヤの正体に気付いてしまって、目を見開いてしまう。
「ほくとさんが他の人のものになったら嫌すぎる」
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