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第4話

「ね、ねえ!ドア開けてってぇ」 「っ、は、はっ……ゃっだ、あきら…めて。」 そんな懐かしい記憶が頭の中に浮かび激しくドアを叩く音に意識が覚醒した。あの時気付いていればこんなことにならなかったかもしれない。 「ねえ、開けてよ、なおっ。」 「ゃだって、どっか、いってよっ……っ」 懐かしい凛がまだ小さい頃の記憶。小ちゃくて綺麗で可愛かった。そんな凛は獣人だからか成長が早く直哉の身長を抜かしている。端麗な顔立ちと長い手足によく出来た頭。凛はαだった。幼い頃から顔立ちは整っていたし成長も早かったからαなんじゃないかとは思っていたけれど。 そんな凛に今直哉は迫られていた。幼い頃から好きだったと俺の番になってくれと。そんな凛に直哉は断り続けていた。直哉にとって凛は可愛い子供のような存在で、それに親へ当てる好きを恋愛的な意味に勘違いしているんだろう。直哉の発情に当てられて焦っているだけだ。 「っあぅ……っ、くす、りかえ、してって……」 運の悪い事に薬は居間にある直哉の鞄の中だ。せっかく病院で貰ってきたのにこれじゃあ意味がない。甘い匂いがする、そう囈言に呟いた凛から一目散に部屋に逃げて今に至る。 「そん、なに嫌……?」 「っ、ちがっ……」 ドア越しに聞こえた切ない声に息が詰まった。否定を口に出そうとして自分の身勝手さに唇を噛んだ。結局俺は凛と番になって捨てられたくないんだ、俺よりも凛の周りには可愛い子だって魅力的な子だって沢山いる。なんか違う、と他の子の方がいい、と捨てられたくない。期待して落胆したくないんだ。自分の保身の為に何度も凛の告白を砕いた。 「ごめんね、 もうあんな事言わないから……」 胸がずくりと抉られたように痛んだ。何を傷ついているんだ。自分が招いた結果じゃないか。 心は痛いのに自分の身体はただただ熱くαを求める。バタン、と静かに閉まったドアの音がやけに鮮明に残って凛の言葉と自分の意思に反する熱がぐるぐる渦巻いて目の前が真っ暗になった。

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