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 親父とともに玄関の扉を潜り、持ってきてくれたタオルで濡れた体や頭を拭い、着替えるために二階にある自分の部屋へ戻ろうとしたとき、リビングからテレビの音が聞こえたため母親がいることに気がついた。  ただいま、と声をかけようかとリビングを覗き込むと、そこはテレビの明かりだけで部屋は真っ暗だった。 「では次のニュースです」  こんな暗い中でニュースを見ていたらしい。  しかもニュースの内容は、この近くで交通事故があったという。  飲酒運転で、しかも事故に巻き込まれた二人は命を落としてしまったそうだ。  目眩がしてしまったのは雨で濡れすぎて風邪を引いたからじゃない。  命を落とした二人の苗字が、毎日遊んでいた幼馴染と同じだったからだ。  それだけならまだ救われた。  けれど俺は、その二人の下の名前も知っている。 「くろ、ちゃん」  二人に囲まれて、いつも幸せそうだった。  そんな両親を一度に亡くしてしまった幼馴染に、俺は一体なにができる? 「龍太郎」  名前を呼ばれ、顔を持ち上げてみると頭にタオルをのせている親父が俺を見下ろしていた。  かと思うと目線を合わせるように腰を曲げ、俺の頭部に手のひらをのせ緩く何度か叩かれた。 「お前がしたいことをすればいい」  そう弱く笑いかけた親父は未だソファに座ったままの母親に近付き、隣に腰を下ろしては慰めるようその体を抱き締めた。  その日はなかなか眠ることができなかった。

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