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日曜の朝、ベッドから飛び降りカーテンを開く。
音でわかってはいたが、未だ雨は降り続いていた。
「泣いてるんだろうねぇ」
昨日とは全く違う間延びした口調。
一つ、決めたことがある。
クロちゃんが笑ってくれるなら俺はなんでもしよう。
階段を降りていくと朝食のいい匂いが漂っていることに気が付きリビングを覗き込むと、親父がコーヒーをすすりながら新聞を読んでいた。
その近くにはエプロンを身に着けている母親の姿が。
昨日の朝とは違い暗い表情を浮かべている二人に声をかけることはせず、履き古されたスニーカーを履き未だ雨が降っているためビニール傘を手に玄関のとびらを開いた。
日曜の朝、しかも雨が降っているからかあまり人は歩いていない。
ポツポツと、傘に当たる雨の音が鬱陶しいと思ったのは初めてだ。
降り続く雨のせいでスニーカーの中まで濡れて気持ち悪い。
奥歯を噛み締め、辿り着いた先は幼馴染の家だ。
カーテンは閉められ、中の様子をうかがえないため人がいるのかどうかもわからない。
それでも俺は玄関の屋根下、開いていたビニール傘を閉じ空いている手で扉横のインターホンを押し込んだ。
かすかに呼び鈴の音が聞こえてくるが、人が近付いてくる足音のようなものは聞こえてこない。
傘の柄を掴む手に力を込め、深く息を吐き出しまたお昼に来ようと踵を返そうとしたその瞬間、目の前の扉がわずかに開かれた。
『母さん?』と小さな言葉をこぼしながら隙間から顔を覗かせたのは目の下にクマをつくった幼馴染の姿だった。
生気の感じられない瞳が俺をとらえたかと思うとそれは大きく見開かれ、できていた隙間に俺が体を滑り込ませるよりも先に目の前の扉は大きな音を立てながら閉じられた。
慌てて扉の取っ手へ手を伸ばし開けようとするが開かない。
鍵をかけられてしまったのか。
しかし近づいてくる足音も、離れていく足音も聞こえないということは最初からずっと玄関の近くにいて、今もここにいるということなんだろう。
「……クロちゃん」
俺の言葉に耳を傾けてくれているのかはわからない。
それでも俺は、キミが笑ってくれるならなんだってする。
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