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「俺さ、今日からこの口調でいこうと思うんだけどどうかなぁー? やっぱ変?」  チャラいかなー、なんて言葉を続けながらその場で膝を折り、玄関の扉に背中を合わせ座り込んだ。  肌寒くなり雪が降り出す季節、地面のコンクリートの冷たさが布を通り越して伝わり思わず鳥肌が立つ。  急いでこようと、上着を着てこなかったのは間違いだったな。 「そろそろ雪降りそうだよねー。積もったら大きいかまくら作って中で餅とか焼いたりして、でも熱でかまくらが溶けて俺たちも一緒に潰れちゃったりさぁ」  話していて楽しかったのは、笑っていたのは俺だけだったのかもしれない。  それでも俺は開いていた口を閉ざすことはせず、時間が過ぎて仕事へ向かう人たちが、玄関の前に座って話している俺を見て怪訝な表情を浮かべたことにも気にせず。  手が徐々に冷えていくことだって、気にならなかった。 「春が来たら桜祭りがあるし。いちご飴食べたり外見だけ凝ったお化け屋敷にだって入ってさ」  時計がないから今の時刻がわからない。  けれど我慢ができないほどに腹が減っているということは昼近くなんだろう。  まあ、だからといってこの場所から離れるつもりはないけれど。 「そうだ、夏休みは一緒に海に行こー? たっくさん泳いでたっくさんかき氷食べて、お腹壊すのもまた思い出だよねぇ」  話し過ぎてなにを話しているのか、理解ができることを話せているのかわからなくなってきた。  それでも無理やりにでも話題を引き出して、聞いているのかわからない扉の向こうの幼馴染に話しかけては笑って。 「そうやって過ごした小学生活のあとの中学生活はどういうものなんだろうねぇ。ま、俺はクロちゃんと同じクラスだったらどんなんでもいいけどー」  日が落ち、徐々に辺りが暗くなり始める。  空腹と寒さ、普段あまり使うことのない頭を使った疲労で家に帰りたくなる気持ちをなんとか押しとどめることができたのは、扉の向こうから鼻のすする音が聞こえてきたからだ。

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