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お互い熱暴走中(金久保×黒滝)
エアコンが故障中。
金久保の部屋へとあがり、言われた言葉が頭を抱えたくなるようなことだった。
お互い熱暴走中
「あっちー」
「暑い言うな。さらに暑くなるだろ」
「なら離れろよ……」
唯一の救いは扇風機があることか。
風量を強に、首がまわらないようにし扇風機の前を陣取っていたら背後から抱き締められてしまった。
お互いに半袖にパンツとだらしない格好のため、汗のかいた素肌同士がくっついて気持ちが悪い。
けれどそれを振り払う気力すら今の俺にはない。
「あーつーいー。あー……ワレワレハ──」
「それ以上言ったらパンツに手突っ込むからな」
慌てて口を閉じた。
ただでさえ我慢できないほどに暑いというのに、これ以上暑くなるような行為はしたくない。
寒かったらしたい、ということでもないけれど。
「なあ、アイス。アイスはないのか?」
「ねえよ……いや、待て」
なにかを思い出したのか、俺から体を離し部屋を出て階段を下りていく足音に耳を傾けながら、起こしていた体を倒し天井を見上げる。
暑さでぼんやりとした頭のまま天井のシミを数えていると、三十までいったところでようやく部屋のとびらが開かれた。
それでも体を起こすことはなく、シミを数え続けていると俺の視界に顔を覗き込んできた金久保が映った。
「……あれ、アイスは?」
首を軽く動かし彼の両手を見てみるがなにも持っていない。
一体なにをしに行ってきたんだと、再び口を開いたとどうじに彼の冷えた唇が俺のを塞いだ。
だからそういう行為はしたくない、と顔を背けようとした瞬間、口内に冷たい塊が転がり込み、あまりの気持ちよさに思わず全身に鳥肌が立ってしまった。
唇を重ね合わせたまま舌先でその塊をいじっていると、金久保の舌がその塊を器用に拾い上げ持っていこうとしたため、慌ててさらに唇を深く重ね奪い返そうと舌を絡める。
冷たい塊が、熱い舌が絡みついきて妙に気持ちがいい。
気付けば下半身も熱を持ち始めたような気がする。
こんな暑い日にそういうことはしたくないって思ってたのに。
「っは……金久保、もっと」
「もっと、なに?」
「……もっと触れ、よ」
冷たい塊を奪われた俺はまるで犬のように口を開きながら荒い呼吸を繰り返し、彼の腕を手にとってはその手のひらを自分の下半身へと押し付ける。
熱を持ち始めていた下半身に触れた金久保はなにを思ったのか、一瞬だけ息を呑んだかと思うと口角を持ち上げ色っぽい笑みを浮かべながら太ももからパンツの隙間へと手を滑り込ませてきた。
自分からこんなにも大胆に金久保を求めてしまうなんて、きっとあまりの暑さに頭がおかしくなっていたんだ。
そうじゃなきゃこの俺が金久保に『好きだ』なんて言えるはずがない。
もしかしたら金久保の頭も暑さでイカれていたのかもしれない。
そうじゃなきゃ俺に好きだって言われてあんなに嬉しそうに、やわらかく笑うはずがない。
お互い、あまりの暑さにおかしくなっていたんだ。
(終)
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