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嫌じゃない、沈黙(青木葉×黒滝)

  嫌じゃない、沈黙  青木葉さんと二人でいると、沈黙になることがよくある。  けれどそれは嫌な沈黙なんかじゃなくて、落ち着くような、むしろ好きな沈黙だ。  そして今もまた、俺たちの間には沈黙がおとずれている。  俺はベッドで携帯をいじり、青木葉さんはベッドを背もたれ代わりに本を読んでいる。  前にどんな本を読んでいるのか聞いてみたことがある。 どうやらミステリー物が好きらしい。  誰が犯人なのか、どうやって犯行に及んだのか、どうしてそんなことをしたのか、それを考えることが楽しいと言っていた。  紙のめくる音に、携帯から視線を外せば本に集中している青木葉さんの背中を見つめる。  いつも結われている髪は解かれ、上下紺色のスウェットとラフな格好だ。  そんな彼の肩が紙をめくるたびにわずかに揺れている。 (見てて飽きないな)  手にしたままだった携帯を放り、ただただぼんやりとその背中を眺めているとそんな俺の視線に気がついたのか青木葉さんがこちらへと顔を向けてきた。  無意識に俺の体は動き、顔を寄せ軽い口付けをおくっていた。 「……黒滝くん?」 「え、と。本の続きどうぞ」 「いやいや、集中できるわけないでしょ」  開かれたままだった本の間にしおりをはさみテーブルの上へ、そのままベッドの端へと腰を下ろしたかと思うと横になったままの俺の頭を撫でてきた。  その優しい手は俺のまぶたを、頬を、唇を撫でたかと思うと最後に顎に触れた。  そのまま彼の顔が落ちてくる。 「……青木葉さん」 「いいんだよ、携帯いじってても」 「集中できるわけないだろ」  先ほどと同じようなやり取りに笑い合っては、そのまま青木葉さんが俺の隣へと倒れ込む。  ベッドの軋む音を耳にしながら、俺の頬にあたりくすぐっていた青木葉さんの髪を指先でいじる。  いつも結ばれているからか、少し癖のある青い髪は俺の指に絡みついてくる。  そんな俺の行動を青木葉さんはなにも言わずに見つめている。  視線を髪から目の前の深い青色の瞳へと移し見つめ返すと、その目がわずかに揺れる。 「黒滝くん……」  青木葉さんの手のひらが俺の頬へと添えられる。  ゆっくりと顔が近付いてきたかと思うと、額同士がぶつかった。  お互いの息がかかる距離。  頬に添えられている手の親指が俺の下唇を撫でる。 「していい?」  なにを、とは聞かず、唇を撫でていた指先を舐め上げてから彼の唇へと自分のを重ねた。  両腕を首の後ろへとまわすと、青木葉さんの手が俺の体に触れる。  そしてそのまま、俺たちは深くベッドへと沈み込んだ。   (終)

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