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聖が倒れた日から、真壁は定期的にこの家に訪れては食事の用意をしていた。
最初のうちは作るだけですぐに帰っていたのが、一緒に夕飯を食べるようになって、自然と他の家事もするようになり、聖がバイトの日には鍵を渡されるようになっていった。
つい世話を焼きすぎる自分もどうかと思うが、それをすんなりと受け入れている聖もどうなのかと過ぎることはあった。
だが、彼女ができても変わらない聖に、しばらくはこのままでもいいのだと安堵もしていた。
物思いにふけながら真壁は時計を確認した。オムライスの卵は聖が風呂から上がる直前でいい。
先にサラダとスープの用意を、と器に盛っていたら風呂場から真壁を呼ぶ声が聞こえてきた。
「どしたー?」
「……がねぇ!」
「何ー?」
居間にサラダたちを運んでから風呂場に向かおうと思ったのが間違いだった。
「真壁! シャンプーがねぇ!」
「ぶっっ! 何て恰好してんの聖!!」
例え男しかいないとしても、タオルも巻かずに素っ裸で出てくるとは何事か。
裸で居間に駆け込んできた聖に素早い動きで背を向け、真壁は彼に見つからないよう鼻を摘んだ。
放っておいたら確実に出る。赤い液体が。
「タオル巻くのめんどくせぇし。聖しかいないから別にいいべ」
俺しかいないから問題アリなんだよ!!
と声を大にして言う訳にもいかず、真壁は背を向けたまま風呂場を指差す。
「あっちにあるから」
「どこだよ?」
「お風呂場の戸棚の上から2番目の開きの右!」
「あーはいはい、わかった。邪魔してわりーな」
ペタペタと足音が風呂場に向かっていったのを確認し、真壁はうなだれた。
自覚があっても困るが、無自覚過ぎるのも問題ありだと思う。油断し過ぎだろう。
軽く反応しかけた自身を握り潰したい衝動に駆られるが、聖はシャンプーを終えると風呂から出るのが異常に早い。
真壁は前屈みになりながらテーブルに皿を広げ、オムライスの仕上げに取り掛かった。
「……わりと、白いんだよね」
一瞬しか見なかったが、脳裏に焼き付いた聖の裸。
もったいない事をした、と思うと同時にまじまじと見ていたら鼻血の噴水を披露していたと確信できる。
男が男の裸を見たくらいでこんな気持ちになってどうするのか、とどこか冷静な自分が叱咤してくるが、身体は正直とはよく言う。反応しかけた自身が、男の裸に興奮しているという何よりの証拠。
聖は、親友なのに。こんな邪な思いを抱くだなんて、どうかしている。
「……ほんと、俺……何やってるんだろう……」
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