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「っあー、今日も美味かった! ごちそーさん」
「ごちそうさまでした。よいしょ」
「あ、ちょっと待て」
ふたりの食器を重ね、立ち上がろうとした真壁の手を聖が掴んだ。
黙ったまま真壁を座らせると、代わりに食器を持ち立ち上がる。
「たまには俺が洗うから。お前風呂入ってこい」
「へ?」
笑顔でそう言ってくれるのは嬉しいが、聖は何というか……雑だ。
皿ひとつ洗うのも、どうしたらそんな音が出るんだと小一時間問い詰めたいほど、ガチャガチャうるさい。
割れる。何もない聖家のため、せっせと集めた2個セットの食器が。
(聖には彼女と使いな、とプレゼントしておきながら真壁自身が使っているのだが)
「あの、聖、大丈夫?」
「大丈夫だって、さすがの俺でも皿洗いくらいできっから。ゆっくり風呂入ってこい」
これ以上聖の好意を無駄にするわけにもいかず、真壁は渋々風呂へと向かう。
その際、1度だけ台所を振り返り黙々と皿洗いを続ける聖を見る。
「……」
聖には見えないよう小さくガッツポーズをする。
――裸(上半身)で台所に立つ聖……頂きました。
スキップしそうになる足を必死に抑えて今度こそ風呂に向かう。
聖宅の浴室はいつも真壁が念入りに掃除しているおかげでピカピカだ。
「相変わらず雑だなー」
なのに、聖ときたらボディタオルはそのままシャワーもそこらに転がったまま。
おまけにどうしてそうなったとつっこみたくなるくらいに、綺麗に並べられていたシャンプーやボディソープのボトルはひとつ残らず薙ぎ倒されている。
「……」
泡に塗れたボトルを掴み、そっと息を落とす。
きっと、風呂から上がるといつもの調子で「泊まってけよ」と言うのだろう。
人の気も知らず、無垢な笑顔を向けて。
鏡に映る、膨らみのない胸板は聖と同じ。
なのになぜ、彼の裸を見て興奮してしまうのか。
もっと言ってしまえば、自分の下半身を見た所で何の感情も沸かないが、聖のそこを見たらと想像するだけで息子がハイテンションになる。
「生殺しだよ、ホントに……」
想像しただけでこれなのに、一晩同じ屋根の下で過ごすだなんて。
聖宅には何度も泊まってきた。
けれど、彼に会うたびに想いが強くなっている。
友達以上の関係になんて、どう足掻いたってなれないというのに。
「真壁ー? アイス食うから早く上がれよー」
「わわ、わかったー!」
素っ裸で物思いにふけるとは、なんと間抜けな。
聖の声で我に返った真壁は、慌てて身体と髪を洗い、浴室を片付けた。
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