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◇◆◇◆◇  人々が寝静まってしまった深夜。  例外もなく深い眠りに落ちた聖の顔を覗き込む者がいた。 「……聖」  暑がりな聖は扇風機の風に当たっていてもなお、じっとりと額に汗をかいている。  汗で張り付いてしまった前髪を払い、いつもくるくるとせわしなく動いている瞳を見つめる。  固く閉ざされ自身を見ることのない黒い瞳。  それはまるで、真壁と聖の決して交わらない関係に酷似している。 「……好きだ。聖……」  いつ友情が愛情に変わってしまったのかなんてわからない。  わからないけれど、聖とキャンパスを仲睦まじく歩く彼女に嫉妬した時、自身の想いを確信した。  互いに男なのに。友人以上の関係など望めないのに。 「……好きだ」  日増しに大きくなっていくこの気持ちを、どうしたらいい? 『――このままだと自分がきつくなるだけだぞ。さっさとケリをつけるんだな』  長い付き合いのため、隠していても神谷には気持ちがバレていた。真壁の心境を察し、心から心配している表情で言われた言葉が、ぐるぐると脳内で繰り返されている。  ケリなんて、どうつければいいのか。  離れたらいいのか、それとも気持ちをぶつけたらいいのか。  そのどちらもできない。  聖に嫌われるのが恐ろしくて……動けない。 「好きで……ごめん」  絞り出すようなか細い声が、闇に溶けた。  

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