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「……聖」
「っ!」
腕を掴んで荒々しく引き倒すと体制が逆転し、真壁は聖の腰に馬乗りになった。
びくついた聖の両腕を押さえ込み、情欲の宿った瞳で彼を見下ろす。
「どうしたいの」
「は、はぁ?」
「俺を煽って、どうしたいの聖」
「べ、別に煽ってなんか……!」
「じゃあどうしていつもと様子が違うの」
獰猛な獣が獲物を狙うかのような鋭い視線で聖を見据え、逃がすことなど許さない。
こんな風になってしまったのは彼のせいだ。
ならば、それなりの責任を取ってもらわなければ。
熱い身体とは裏腹に、頭の隅に妙に冷静な自分がそう囁いている。
なにもいきなり突っ込んで、だなんて考えていない。
ただ、男――真壁大和という人間をいたずらに煽ればこんな風になるのだということを思い知らせてやりたかった。
「……」
だが、聖が返した言葉に真壁は鈍器で頭を殴られたような感覚に襲われた。
「す、好きって……言われたんだよ」
「――誰に。いつ」
予想外過ぎる聖の言葉に息を飲み、噛み付くように問い詰める。
躊躇うよう何度も瞬きをする聖に焦れ、掴んだ腕に力を入れる。
「いて、」
「答えて聖。誰に言われたの」
「いてぇって、――お、お前だよ!」
「は?」
「……気持ち悪ぃだろ。夢でお前に何度も好きだって言われて、でも現実のお前が言うわけないからなんであんな夢見たんだろうって混乱して!」
聖の腕を掴む力は緩んでいない。
むしろ、離さないと言わんばかりに力は増していく。
「だから意識なくなるくらい酒でも飲んで忘れようと思ったのに! ……お前、…なんで来るんだよっ……」
「……」
「……女にフラれてどうかしてたんだよ俺。心配すんな、お前に惚れてるとか……そんなんじゃねぇから」
真壁から眼を逸らし、俯いてしまった聖は気付いていない。
彼の瞳に、妖しい光が宿ったことなど。
「真壁、いい加減離せ――、ッ!?」
「……」
両手を頭上でひとつにまとめられ、聖は息を飲んだ。
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