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痛む身体を引きずり、キャンパスへ辿りついたのは昼前。今から昼食を取れば午後一の講義までいくらかゆったりする時間はある。
真壁と話をする時間も、充分に取れる。
スマートフォンのパネルをタップすれば、時刻だけが表示される。今朝送信したメッセージに返事は無いし、読まれた気配もない。
「……意味わかんねえ」
――無視したいのは、こっちだ。
ふつふつと込み上げてくる怒りで目の奥がじくりと痛んだ。けれど、あんな風にされてもなお、真壁を大事な友とする気持ちは薄らいではいない。だからこそ、きちんと話がしたいというのに。
言葉で表せそうにない気持ちがちりちりと胸の奥底から湧いてくる。
焦りにも似たそれは、すべてを焼き尽くそうとする真夏の太陽のように熱く、それでいてどこかひやりと寒気を覚えた。
『好きだ――聖』
祈るように何度も耳元で紡がれた言葉。
今も、耳にそのぬくもりが残っているようで。ぶるり、と聖は背を震わせた。
自身の両手でその身体を抱きしめようとした瞬間――とん、と。肩を軽く叩かれた。
弾かれたように勢い良く振り返ると、大きな目が聖をじっと見つめていた。
「――な、んだよ、その顔。びっくりした」
「……。おまえこそ。いつもの勢いはどうしたんだよ」
チッ、と舌打ち交じり答えて固まっていた足を一歩ずつ踏み出す。気まずさと居た堪れなさから、引きずるような足の動きのせいでスニーカーの踵がざりざり、とコンクリートの隙間に入り込んだ砂利を擦っていく。
ここで真壁が傍に居たならば、「靴が駄目になる」と言って叱ってくる。
けれど、唇を尖らせた聖の隣に居るのは、神谷。彼は聖の靴がどうなろうと構いはしないしそもそも足元に見向きもしない。
そんな神谷は聖の歩幅に合わせながら、きょろきょろと辺りを窺っている。
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