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◇◆◇◆◇  ふ、と目を覚ました瞬間、不快感が聖を襲った。  じっとりとTシャツや額を濡らす汗。つんざくような、蝉の鳴き声。空腹を訴えかける腹。  何もかもに、起きぬけ早々苛立った。  汗で濡れたTシャツを脱ぎ捨て、ちらりとアラームに視線を移す。  アラームよりも早く起きるとは、自分も中々やるではないかと誇らしげな表情で。  ――しかし、その表情は一変し、青ざめた。 「じゅ、じゅじゅじゅ、じゅうにじ!?」  予定よりも2時間も遅く起きてしまっていた。  なぜ、なぜこんなことに。  慌てて残りの服を脱ぎ散らかしながらベッドから足を降ろした。そこに、こつりと何かが当たる。 「……あ?」  3件の着信と、いくつかのメッセージの受信を知らせるスマフォ。  すぐさまパスコードを入力し、すいすいと操作して内容を確認し、聖はうなだれた。 『早く来い』 『さっさと来い』 『シカトこいてんなよ早く来い』 「なにこの子怖い……」  文字だけで、般若のような形相で怒り狂う神谷が想像できた。着信も、予想通り神谷から。  真壁のまの字もない。  ちょっと寝坊して遅刻したからって、こんなに怒ることないのに――ぶつぶつと文句を垂れつつ、身支度を整えて家を出た。  今更慌てたって、講義に間に合うわけがない。ふああ、と大きな欠伸をしつつキャンパスへ向かう。

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