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 大学を出て、5分。  程近い距離にあるそのネットカフェは、昼過ぎでありながらわりと多くの客が入っているようで対応に追われる店員の姿があった。  客でもないのにその店員の時間を割くのは躊躇われ、どうしたものかと頭を掻いて立ち竦む。  蒸し暑い外を全速力で駆け、今は涼しい店内。反動で滲む汗に眉を潜めた途端、名前を呼ばれた。 「お前、何やってんの?」 「――早川ぁ!?」  突然の同級生の登場につい大声で名前を叫んでしまい、聖はカウンターに居た店員とサラリーマン風の客に鋭い視線を向けられた。  呼ばれた早川も聖の口を両手で押さえてぺこぺこと頭を下げている。  可笑しいのは、早川の姿。カウンターで接客をしている店員と同じ服装をしている。  視線と指の動きだけで「お前、ここで働いてんの?」と問い掛ければこくこくと頷いて肯定している。  静かにな、と小さく落とすと聖の返事を待たずに口を塞ぐ手を外し、通路の端に避けるよう促した。 「合コン行き過ぎて金なくなったから、ここで短期のバイトしてんの」 「あ、そう」 「うわ、その全力で興味無い感じ傷付くわ!」 「それより、真壁。来てるか」  まかべ。  その名前を耳にした途端、早川の表情が曇った。  制服であろう黒いスラックスから一枚のカードを取り出して。 「今朝急に解約したいって来た」 「え……」 「俺見てびっくりはしてたけど、他には何にも言わないままカード突っ返して帰ってった」  アイツらしくなく何か焦ってた。  と続けた早川の手にあるカードには、確かに真壁の名が刻まれていた。  目を見開いてそのカードを見入っていると、ゴホンとわざとらしい咳が耳に届いた。 「早川くん」 「す、すんません」  明らかに額から鋭い角を生やしている店員にぺこぺこと謝り、早川は聖にカードを押し付けるとカウンターの中へと入っていく。  悪い、と手の動きと表情で聖に謝罪するとすぐに接客用のそれで客に対応し始めた早川にそれ以上話を聞くことはできなかった。

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