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停留所に着いたと同時に競歩並みの速さで運賃箱まで行き、料金を支払うと後方の乗客と運転士に何度も「すんません」と頭を下げてバスを降りた。
おそらくあのつっこみをしたであろう幼い女の子が笑顔で手を振ってきたので苦い表情で手を振り返し、バスが過ぎ去るのを待った。
小さくなっていくバスに、一体自分は何に対して謝罪していたのだろうかと僅かな疑問を抱くが、恥をかいたことに変わりはない。暑さが原因ではない頬の火照りはひかず、聖は何度目かわからない重い息を吐いた。
「うっし。行くか」
神谷のメッセージが示す真壁の家へと足を踏み出し、気付いた。重く苦しいだけの罪悪が、ほんの少しだけ和らいでいることに。
今年最大ともいえるほどの恥ずかしさではあったが、車内の空気はほわりとやわらかいものだった。おかげで、心に少しだけ余裕ができた。
複雑な笑みを浮かべ、見知らぬ道を迷わないようにと歩み始めた。
真っ白な壁に、螺旋階段。
一見お洒落な外観の真壁のマンションを前に、聖は少しだけ怯んだ。自分のボロアパートとは、あまりにも違いすぎる。
外観と住み心地は異なるとはいえ、こんなにも綺麗な家を持っているのに、何もかも不便なボロアパートに寝泊まりしてくれていたのか。
「っと、部屋は……」
昏い方向へと傾こうとする心を宥め、スマフォを開いて神谷のメッセージを確認する。
402号室。
よし、と小さく呟いて示された部屋へと向かう。エレベーターを待つ時間すらもどかしかった為、2段飛ばしで駆け上がる。ここまで来たら、もう逃がしはしないと眉間に深い皺を刻んで。
階段を登り切ると、日頃の運動不足が祟ってか息が荒れて中々整わない。
たかだか4階分の階段なのに、と舌打ちをして幾つも並ぶ鈍色の扉をひとつずつ確認していく。
――402。目的の部屋はすぐに見つけた。けれど、僅かな違和感に首を傾げた。
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