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 また神谷が聞けば「聖に色気ェ!? ないない!!」と全力で否定されるのだろうが。  やはり、聖のそういう面は自分だけが知っていればいいと、真壁は改めて強く思い腰を抱く腕の力を増した。 「お、俺は、言ったぞ。自分の気持ち、はっきり。全部。なのに、聖はわかりづらい」  拗ねたような口調の真壁にふはっと笑い、聖も真壁の腰に手を回した。 「俺をほもにした罪は重いから、全力で幸せにしろ」と囁きぐっと背伸びをして耳元で続ける。 「俺も、好きだぞ」  最後に「たぶん」と付け加えたのは照れくささ故か、それともおふざけが好きな彼の性分のせいか。  どちらかは判らないが、聖の落とす言葉総てに舞いあがる真壁にはどうでもいいようで、抱きつぶす勢いで腕に力を増して聖の肩口に額をぐりぐりと押し付けている。  痛い、だの苦しいだのとじたばた暴れる聖の身体を抱いたまま、涙混じりの声音が告げる。 「好きだ」――と。あの夜と同じように何度も、何度も。  切なげなその声に狂わされたのだと、聖は真壁を抱き返しながらポツリと零す。  けれど、箍が外れたように何度も好きだと繰り返す真壁には届いていないようで、ぐりぐりと頭を押し付けている。  そんな真壁を引き剥がし両手でその頬をべちりと挟むと、真正面から見据える。  涙と鼻水に濡れた心底情けない顔。 「ぶふっ」 「ちょっと! 聖!! 笑わないでよ!!」 「なんだその顔だっせぇ! すっげだっせぇ!!」 「笑うなってばー!!」  ムードもデリカシーも皆無で、何なら色っぽさの欠片もないのに。  なぜか、愛しさが募っていく。 「汗臭かったらごめんな」と一言謝ると聖はTシャツを脱いで真壁の顔面を乱暴に拭って投げ捨てた。  ばさり、とTシャツがフローリングに落ちたと同時に、聖の腕が真壁を玄関の壁に縫いとめていた。鼻先が触れ合うほどの距離で、聖はボソリと落とす。 「ほら、塞いどかねえといつまでも笑うぞ?」と。    その口車にあっさりと乗せられた真壁は舌打ちをしながら底意地の悪い笑みを浮かべる聖の腕を掴んで体制を逆転させ、噛みつくようにくちづけた。  言葉も、呼吸も、すべて奪い尽してしまうように。

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