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歯列をなぞり、互いの舌を絡め、時にかりりと噛んでは咥内の熱を確かめ合う。
そのたびに濡れた音が響き、触れ合う箇所からじわじわと熱が広がっていく。
換気のされていない部屋のせいか、それとも言葉を発することなく互いの唇をむさぼり続けているためか。
判らないが、今はただ、その熱に浮かされていたかった。
「は、んん」
息を継ぐことすら許さない攻防に白旗を上げたのは聖だった。ぼすぼすと真壁の背中を軽く殴り、唇を合わせたまま荒い呼吸を繰り返している。
つ……とその顎を、どちらのものかわからない唾液が伝う。
指先でそれを拭うと、真壁は再び唇を塞いでするすると腕を移動させていく。
顎から耳元、首筋に薄っぺらい胸元へ。大きな掌が身体を撫でていく感触にびくびくと小さく震えながらも、聖は重ねた唇を離そうとはせずお返しにと伸ばされた舌を噛んだ。
瞬間、真壁の肩が軽く跳ねて、胸元にあった手が小さな突起をきゅうと摘んだ。
「んっ」
抗議するように真っ黒な瞳がぐるんっと動き真壁を捕らえた。けれど、それは涙で潤んでいるせいでただ真壁を煽るものでしかない。
腹の奥底からじりじりと湧き上がってくる欲望に身震いしながら、胸元の手はそのままに残った片方の手が聖の下肢に伸びた。
ジーンズのベルトホールをなぞり、革ベルトの金具を弾き、決して直接肌に触れてこない動きは聖を焦らすばかりで、目的の箇所へ伸びない手に腰を押し付け真っ黒な瞳が情欲に揺れる。
早く、その先を早く――と。
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