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 何がきっかけだったのか、そんなもの、真壁本人にすら判らない。  ただ、目が覚めたら目の前に聖が居て――笑っていて。心から望んでいた情景がそこにあって。ただただ、嬉しかった。 「ふ、んん」  声が漏れ出るのを堪えようと口元に伸ばされた手を剥ぎ取り、代わりに自身の唇で塞ぐ。  次々に繰り出される真壁の予想外の動きにうまく対応できないのか、息苦しそうにしながらも、聖はその唇から逃げようとはしなかった。上顎をなぞり、絡め合う舌を強く吸って、呼吸を乱しても。  いつかのように聖が掴むのは自身の手ではなく、真壁だった。縋るように強く掴んでいる癖に、その真っ黒な瞳は煽り立てるようにぎらぎらと熱が籠っている。  ――やり直し、だな。  小さく落とされた言葉に、真壁の顔がくしゃりと歪んだ。今度は、泣かせたり怯えさせたりしないから、と。聖の身体をきつく抱きしめながら。  向かい合う聖の唇から頬に、首筋を舌で撫でながら右手をTシャツの中に潜り込ませた。  左手もごそりと動かそうとしたのだが、聖の手がそれを許さなかった。離すな、と。黒い瞳が強請っていて。 「……ッ、」  キスの合間に漏れる押し殺すような吐息に、真壁の心臓は張り裂けそうだった。  前回のように、真壁が無理矢理に求めるだけではない。  聖もまた、真壁を求めている。ゆるゆると動く手が、無意識にか意識的にか真壁の下肢に伸びてくる程に。 「こら」 「あ?」 「今日は、俺がするの」  前回泣かした分、思い切り優しくしたい――そう続けた真壁の指先が胸元に色づく小さな突起の周りをやわやわと揉みしだき、聖の腰が浮いた。  浅い呼吸を繰り返して両膝をすり寄せた聖はぐっと身体を起こし、真壁の首筋にゆるく噛みつき、真壁がそうしたように噛み痕を舌で舐めて、囁いた。 「泣かせていいぞ。今なら、たぶん前とは違うから」 「あの、煽らないで、ひじり」 「だったら早くしろ」  ただでさえ理性と欲望の狭間で揺れている真壁をぐらぐらと力任せに揺さぶり、聖は繋いだままの左手を下肢へと誘いひとつ深い息を吐いた。

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