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秘密の共有

「メイクしてねえならこれ着る意味無くね?」 「いいんだよ……なあ祐樹……キス、してもいい?」 「……うん」  お互い向かい合って座り、ぎこちなく唇を重ねる。前回は大智の勢いで抜き合いをしただけ。その時、堪らなくなった祐樹が大智の唇を奪ってしまったけど、きっと大智は快楽に夢中でそれを覚えていないのだろう。「キスしちゃった」と照れ臭そうに笑う大智に思わずクスッと笑ってしまった。  二人だけの秘密の行為──  祐樹にとってこの恋が実らなかったとしても、この秘密の共有ができた事だけでも心が満たされ嬉しかった。 「なあ大智……どうせやるなら、もっと気持ちいいことしねえ?」  男同士のキスでも嫌悪感を示さずにこうやって嬉しそうにしているなら大丈夫。祐樹はもう少し踏み込んでみる。あと少し、あと少しで大好きな大智が俺のものになるんだと、慎重に言葉を選ぶ。でも既に興味津々な大智には、そんな気を使わなくても問題はなさそうだった。 「それって……え? マジ? セックス……ってこと?」 「そう。こないだ大智に触られて気持ちよかったから……お前のせいでこういう事、知っちゃったから……もっと先のこともやってみたい」  そう、大智のせいだ。お前のせいだと言ってしまえばノーとは言えないだろう。  祐樹の言葉の返事もそこそこに大智はぐっと祐樹を抱き寄せた。 「してみる? 俺はいいよ。多分お前なら俺、抱けるし」 「違うよ、俺が大智のことを抱いてやるって言ってんの。だってお前、朱理のこといつも抱いてんだろ? だから違った感覚味わわせてやるって」  気が急いてしまって直球過ぎたか? 躊躇いの表情を見せた大智に一瞬ドキッとする。大智とその彼女のセックスを想像するだけで吐きそうになるけど、ここはどうしても説得をしたかった。  自分が大智に抱かれるなんて想像ができない。  ずっと妄想の中で祐樹は大智を抱いてきたのだから── 「えっと、俺が祐樹に? 」 「そう。ケツでやるの、相当気持ちがいいらしいよ? お前が抱かれるなんてまずないだろ? 朱理がお前でアンアン言ってるように俺がお前をアンアン言わせてやるよ……」  祐樹は大智を強引に抱き寄せて、耳元でそっと囁く。耳朶を甘噛みしてフッと息を吹きかけてやったら呆気なく大智は祐樹にしな垂れかかった。チョロいな、と思いながらそのままゆっくりと押し倒す。  赤い顔をして期待に満ちた目を向ける大智に祐樹はとどめを刺すように唇を重ねた。

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