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4:絶対に諦めない

覚悟を決めた薫は、本気で由にぶつかり始めた。積極的に話しかけるし、連絡先も頑張って聞き出してマメにメールを送った。まぁ、メールに返事が来るには3割ぐらいだが。 それでも諦めなかった。どんなに邪険にされても、ひたすら由だけを見続けた。 「あー、ほんともうなんなのお前」 「なにが?」 「何がって、あー!」 ある日のこと。薫が由の店で飲んでいたら、急に由が薫を見て言ってきたのだ。由自身もどう伝えていいのか分からないらしく、頭を掻きむしって唸っている。 それを見てキョトンとする薫。その場にいた客は、由の気持ちが分かるからか、面白そうに笑っている。 「もう諦めちゃいなよ、由さん」 「え?由さん、何を諦めるの?」 「お前は黙ってなさい、薫」 少しだけ頬を赤くした由が、薫の頭を軽く叩いた。初めて見る由の表情に、薫のテンションが一気に上がる。ニコニコと笑いながら、「大好きだよ、由さん」と爆弾発言を落とした。 薫の言葉に、ケタケタと笑う客。より一層顔を赤らめる由。 店の中が少しカオス状態になった時だ。カランと、来客を告げる音が店に鳴り響いた。 誰だろうと、薫がふとした感じでドアを見る。するとそこには、以前由と仲良さげに歩いていた男が立っていた。由を見て嬉しそうに顔を綻ばせたが、薫を見てその表情を汚いものを見るような表情に変える。 分かりやすい反応に薫はムカつきながらも、気づかないフリをして由に視線を戻した。しかし、向こうは薫の反応にイラついたらしくわざと絡んできた。 「ねぇ、由さん。もしかしてこの子がうざったいって言ってた子なの。こんな平凡でガキなのに、よくこんな店に来れて由さんを好きって言えるよね」 座っていた薫を押しのけて由の前に座った男は、そんなことを言いながら薫をジロリと睨んだ。皆の前でそんなことを言われて、薫は一瞬恥ずかしい気持ちに包まれた。しかし、本気になった薫に怖いものなんて何もない。 すぐに、男がやったことを同じようにやり返した。男を押しのけて、由の前に座ったのだ。 「ちょっ!」 「今、俺が由さんを口説いてる最中なんです。俺と同じようなガキなくせに。顔が俺よりもちょっとだけキレイだからって、邪魔しないでください」 「はぁ!?何言って、」 「俺は何を言われようとも、絶対に諦めませんから」 男にも、そして由に対しても薫はそう宣言した。

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