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5:早く付き合ってしまえ!

「由さん!あの男、由さんの何!俺の邪魔ばっかりしてくるんだけど!」 ある日のこと、プリプリと怒った状態で薫が店に入ってきた。その姿が子供みたいで可愛くて。気づけば、店にいた全員が薫の姿を見て笑っていた。 「ちょっと!皆して何笑ってるんですか!」 「わりぃ。お前が子供みたいでな」 「ちょっ!未来の由さんの恋人になる男ですよ!俺は、」 プクッと分かりやすく拗ねれば、ごめんと謝りながら由が薫の好きなつまみをいつもの席に出した。最近は、薫が店に来れば何も言わずに由が用意してくれるようになった。しかも、これは由のおごりである。 まぁ、おごりであることに薫自身は気づいていない。気づいている他の客は、早く由が想いを自覚して付き合えばいいのにと思ってるぐらいだ。 ニマニマと表情を緩める客達に、由と薫は不思議そうに顔を見合わせる。しかし、自覚のない2人に客がニマニマしてる理由が分かるわけもなく。すぐに考えるのを止めた。 「だから、由さん!あの男誰なんだよ」 「あの男って?」 「あの、キレイで可愛くて、俺によく突っかかってくるあの男!」 由が用意したつまみをモグモグと美味しそうに食べながら、薫は怒りながら聞く。薫が一瞬誰のことを聞いているが分からなかったが、すぐにピンと来た。 「あいつは、俺の兄貴の子供」 「由さん、お兄さんいたの?」 「あぁ」 「俺も!俺もね、兄ちゃんがいるんだ。由さんとおそろいだね」 由との間に同じ共通点を見つけ、薫は嬉しそうに笑った。その笑顔に、由は一瞬顔を赤くするが、すぐにいつもの表情に戻る。 そんな由を見ていた1人の客が、さっき以上にニマニマしながら由に話しかけてきた。 「由さん。そろそろ、覚悟決めたら?」 「あぁ!何がだ、」 「っもう!分かってるくせに」 ちょいちょいと腕をつついてくる客を、由は本気で睨んだ。しかし、すぐに薫が由の名前を呼んだ。すると、睨んだ顔がいっぺん優しい笑に変わる。 (ほんと、早く付き合ってしまえ!) 由の変わりように、店にいた客誰もが思った。 しかし、それをよく思わない者が店に紛れ込んでいた。

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