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6:ピンチ!だけど…

「ちょっといいかな」 バイトも終わり、由の店に向かって歩いていた時だ。薫の後ろから、誰かが声をかけてきた。振り向くとそこに立っていたのは、1度も話したことのない男。でもたまに、由の店で姿を見たことがある男だった。 店の奥で、ただジッとしているのを薫も何度か見たことがあって。何をしてるんだろうと不思議に思っていたから、頭の奥底に強く残っていた。 「あの、」 「ねぇ、ちょっとだけ。いい?」 ドロリとした甘い声。その声が、何だか怖く感じて。薫は、ゆっくりと後ずさる。それを男はゆっくりとした足取りで追ってくる。 逃げなきゃ。薫はそう思ったが、いつの間にか由の兄の息子である男が後ろにいたのだ。前には知らない男。後ろには、薫の嫌いな由の兄の息子。挟まれてしまった薫にはどうすることも出来ず、あれよあれよという間に廃ビルのような場所に連れてこられた。 知らない男に腕を掴まれながらも、何度か逃げようと試みた。しかし、知らない男は薫よりも背が高く身体をはる系のスポーツをしていたのか横幅もある。そんな男に、ひ弱な薫が勝てるわけもなく。気づけば、押し倒されていた。 「ねー宏明(ひろあき)くん。本当に俺、この子ヤっちゃっていいの?」 「いいよ。あんた、そいつヤりたかったんでしょ」 「そう!1年前からずっとだよ。ずっとこの子を犯したかった」 薫を押し倒した男は、興奮しながら上から見下ろしてくる。由の兄の息子(名前は宏明)は、すごくつまらなそうに2人を見ている。 何が起こっているのかよく分からない。でも、このままだと自分は危ない。それが分かっているのに、逃げようとしても逃げられない。 「やだっ!!離せよ!」 「無理だよ。だって俺、だって俺、君を犯したくて犯したくてたまらなかったんだ」 男の顔が薫に近づいてくる。嫌だ、嫌だ! 初めては。自分の初めては、絶対に由がいいと決めていたのに。由じゃないとダメなのに。 「よしさんっ!!!」 「おい。何、俺のもんに手ぇ出してんだ」 聞き覚えのある声。3人が一斉に声のした方を向いた。 「薫から離れろ、クソ野郎」 そこに立っていたのは、薫の愛してやまない由だった。

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