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第7話

こいつの考えてることが本当にわからなくて、隣にいる男を目を向けた。男…川端?は、焦ったようにあからさまに目を逸らした。 「おいお前、その遊び、こいついねぇと困るか?」 「え〜いや~…」 「困るか?」 「全然困りません」 「っあ、おい川端!」 桜井は思わず立ち上がって川端の方を睨んでいるが、すぐに諦めたようにため息を吐いて俺の方を見た。 薄茶色の瞳が、なんだか昨日までの俺を見るような目とは全く別のようで、胸が嫌にざわつく。 「しょうがねぇなー。…で、どこ行くの?」 俺が黙って歩き始めれば桜井はその後についてきた。べつに行く宛はないけど、どこか人気のないような場所…校舎裏の倉庫前がいいか。 ◇ 「そんで、なあに?」 「……」 『あのとき、助けてくれてありがとう』 そんだけの短い文なのに中々に口から出てこない。喉につっかえて何かにせき止められているようだ。 黙ってしまい中々発しない俺に、桜井は訝しげな表情をしながらおとなしく待っていた。 考えすぎてなんか頭がぼーっとしてきたような…体もなんか、熱い…今日気温高かったっけ 「……笹塚?お前もしかして…」 そんな俺に桜井は顔を顰めて匂いを嗅ぐように呼吸をしたあと、ハッとした顔で俺に少し歩みよった。 「笹塚!抑制剤は!?」 「は…?」 抑制剤、と言われてようやく自分がまた発情期になったことに気づいた。まだ少し前に来たばかりだと言うのに、俺の発情期は不規則で唐突にやってくるから厄介すぎる。 …しかも、こんなタイミングで。 「また俺…お前に言いたいことあんのに…」 「とりあえずいいから、抑制剤もってないの!?」 「ある…ポケット」 なんだかいつにも増して頭が働かないし、体の力も入らない。 いつの間にか桜井にもたれ掛かるようになっていて桜井も俺を支えているが、さすがにフェロモンに当てられてきついのかそれを堪えるように唇を噛んでいた。 そして右手で俺のポケットの中を探って抑制剤を探している。 「さくらい、」 「…なに、っ!」 呼びかけると桜井が顔を上げて俺を見た、瞬間、俺は無意識にその形のいい唇を食べるかのように口付けていた。 桜井は目を真ん丸にさせて、固まっていたが俺がぺろりと、唇を舐めると火がついたように頭を押さえ込まれた。 深く舌が絡みついて、やらしい唾液の音が脳内に響く。誰かに見られたらとか、なんでこいつとキスしてんだとか、考えることはたくさんあるのに今はもう目の前のことにただただ夢中。 「んっ、ふ…っ、ぅ……」 桜井の慣れた舌使いに翻弄される。舌に甘く噛み付いたと思ったら、優しくじゅうっと吸われて、頭も口の中も麻痺してくる。 思わずもっととねだりそうになったときに、がくんと腰に力が入らなくなって思わず桜井にしがみついた。 …腰が抜けた。

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