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第13話 side:桜井
正直に言う。
めちゃくちゃ浮かれてる。
「勉強教えてくんねぇ…?」
いや、教えるよ教える。なんでも教える全部教える。だって塾とか通い始めたら俺と会う時間減るじゃん。そんなの辛すぎる。
「頼まれればしゃーなしに教えることもあるけど、そもそも勉強教えるっていう行為自体苦手なんだよね」
まあこれに関してはわりかし嘘ではないけど。教えるって言うのは苦手ではある。でも笹塚が俺を頼ってまで勉強教えて欲しいんなら全然ウェルカムだからね。
けどうんいいよ無条件で教えます、じゃちょっとつまらないので条件を出してみた。
提示した条件については、反応は悪くなかったけどまだ少し悩んでいるよう。最初の頃よりいろいろあったしいろいろヤッてるしだから打ち解けたかなと思ったけど、まだ警戒心はあるらしい。
すぐに飲んでくれたけどね。
切羽詰まっているっぽっかたから、絶対この条件は飲むだろうと思って提案したのは内緒。
◇
俺宅。
最初が最初なだけあって、少し落ち着かないのか桜井は俺の部屋の中を見渡していた。
家具も少ないし、必要最低限でよく生活感がないと言われるけど、結構気に入ってる。
適当に座ってーと告げて、キッチンからジュースを注いだコップを二つ持ってこれば、ぎこちなく部屋の隅に座る笹塚を見つけて素直にヤりたいと思ったけど、必死にそれは今は堪えた。せっかく俺を頼ってくれてんのにぶち壊したくないし。
「はい、どーぞ」
「…ん」
俺とセックスしてんの思い出してんのかなぁ。
少し頬が赤いのが可愛い。こんな人相悪い不良してますって感じの男を可愛いと思うなんてほんとだいぶ頭ヤられてる。
「それで、どこがわかんないの?」
「全部」
「ぜんぶ…ん?」
「全部わかんねぇし何がわかんねぇのかもわかんねぇ」
参考に前回のテスト結果を聞けば目眩がした。思っていた以上に中々手強そうだ。呑気に三回何を聞いてもらおうなんてるんるんで考えていたけど、真面目にやらないとやばいかもしれない。
残り一ヶ月しかないし、頼まれたからにはしっかり赤点を回避させてあげたい。そして心置きなくお願いごとを聞いて欲しい。叶えてほしい。
俺は真面目に真面目に、たまに襲ってしまいそうになる自制心のない下半身に喝をいれながら、俺の全力を尽くして笹塚の赤点回避のために勉強を教えた。
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