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第14話

テスト結果が返ってきた。 俺は家に帰ってそれを清重に見せる前に、桜井の家に寄っている。こんなに世話になったからには、最初に報告しなきゃならねぇし。 来たばかりの頃桜井の部屋で勉強するというのは慣れなくて困った。そわそわするというか、記憶はないがこいつと情事をしたベットはそこにあるわけで。 発情期がきたら絶対にヤッてしまう自信しかなかったが、運のいいことに今回は重なることはなかった。 そしてもう一ヶ月も経てば桜井の部屋なんて慣れたもんだ。桜井とテーブルの前に座り、まだ未開封であるテスト結果の通知をテーブルの上に置く。 「…開けるぞ」 「うん」 そっ、と開いてみた。 紙の上に書かれた点数を見れば、どれもギリギリといった点数ではあったものの、赤点は回避することが出来ていた。本当にギリギリではあったし、決して褒められる点数ではなかったが、俺は嬉しくて思わずその場の勢いで桜井に抱きついてしまった。 「これで小遣いも減らねぇし塾も行かなくてすむ!ありがとな、桜井!」 「っ、う、うん。よかったじゃん」 なんだか桜井の声が裏返っていたけどそんなことどうでもいい。早々と塾のパンフレットを取り寄せていた清重にこの結果を早く見せたくて、すぐに桜井から離れると結果の写真を撮ってSNSアプリでメッセージを送っていると、桜井が横からスマホを取り上げた。 「おい、なにすんだよ」 「これで何でも言う事きいてくれるよね?三回ぶん」 「…まあ、きくけど。お前のお陰だしな」 桜井は取り上げたスマホをテーブルの上に置くと、ずいずいと俺に迫ってくる。 座ったまま後退りをすれば背中がベットに当たって行き止まり。桜井はベットの縁に両手を置いて、腕で俺を挟むようにしながら見下ろしてくる。 嫌な予感がする。 「俺とえっちしよっか」 …やっぱり。 思わず眉間に皺がより、下から睨みつけた。 「俺は今発情期でもなんでもねぇし、セックスする必要はねぇんだけど」 「発情期じゃなくてもさぁ、好きな人とはえっちしたいじゃん?」 「っまた、好きとか、冗談やめろ…」 ストレートな言葉に、顔に熱が集まってくる。それを見られるのが嫌で俯けば、桜井に顎を掴まれて無理やり顔を上げさせられ、目線が絡み合う。 「冗談じゃない。どうしたら信じてくれんの?毎日好きって伝えてるし、笹塚のために一ヶ月時間を割いた。俺笹塚に会う前は毎日オメガとセックスしてたけど、今はもうしてない。笹塚とこのベットではじめてヤッてから、笹塚としかしてないよ」 「…う、うそだ」 「嘘じゃないってば。ほんとどうしたら伝わんの」 ため息混じりに言う桜井。なにがどうして俺を好きになるのかわからないし、面白がってるようにしか思えない。 目線は絡み合ったまま。信じられないし、でもどうしたらいいかわからず何も言えずにいると、桜井の瞼がゆっくり閉じて唇が近づいてきた。 キスされる、と思ったときにはもう唇が重なっていた。 軽く触れるだけのキス。すぐに離れると桜井は小さく笑った。 「逃げないんだ」 「……しない、とは言ってねぇ」 そう、あくまで三回の願い事の一つを叶えるだけであり、決してこれは俺の意思じゃない。意思じゃないから、俺からキスしたって、別にいいわけで。叶えるだけ、勉強の礼。それ以上でもそれ以下でもない。 何度も何度も言い聞かせながら、次は俺から口付けた。隙間からぬるりと忍び込ませた舌は、桜井の舌によって器用に絡めとられた。

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