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第2話

 あれから二十年たった。  そろそろ、友人から伴侶という位置を手に入れたいと、そう思っている。  それに、この国には伴侶制度があり、同性の婚姻も認められている。自分のまわりにも同性の伴侶を持つ者は多い。 「なぁ、周」 「なんでしょうか」 「お前の父親のこと、貰ってもいいかな」  大柄で筋肉質な身体を丸めてモジモジとする姿に、周は嫌なモノでも見る様な表情を浮かべる。  そういう目で自分を見る姿は宗とそっくりだな、と、クレイグは心の中で思う。 「やっとその気になったんですね」 「な、何を?」  どういう事だろうか。  今まで宗に対する気持ちは隠してきた。誰にもばれていないはずと思っていたに。 「クレイグさん、うまく隠せていると思ったら大間違いですよ?」 「えっ」 「それも、隊長なんて二人が付き合う事を俺が反対していると思われているんですからね」  宗に対する気持ちを全然隠せていないし、しかも関係のない周には悪い事をしてしまった。 「うわぁ、それは……、なんか、ゴメン」  皆に知られているということは、宗にも知られているということだろう。周をそっと見れば、言いたいことがわかったか肯定するように頷いた。 「やっぱりか」  そんなに自分はわかりやすいのか。恥ずかしくて、いたたまれない気持ちとなる。 「そりゃ、いつからだよぉ」 「本人の口から聞いて下さい」  知りませんと腕を組みながらそっぽを向く周に、こりゃ大変だと慌てる。 「すまん、俺、行くわ!」  知られていたという事実がものすごく恥ずかしいが、それを知ってしまった以上、何もなかったという事にするのはできない。 「はい。まぁ、一応、頑張ってください」 「あぁ」 「父は鍛錬所へ向かったようなので」 「はは。物足りなさそうだったからな」  あまりに骨のない相手だった故、宗は同じように暴れ足りない奴等と手合せをしているだろう。  求婚に必要な物は宿舎で休んでいる者に、中身は秘密にして預かってもらっていた。  それを受け取りに、ひとまず、その者の元へと向かう。  勝手に部屋に入り、寝ている所を叩き起こす。そして荷物を受け取ると宗の元へと向かう。  綺麗な箱の中身は、求婚をする時に贈るシルバーのアクセサリーだ。  大抵、女性には指輪、男性には首飾りを贈るのだが、クレイグが用意しておいたのは細かい彫を施したカフスである。  これは知り合いの商人に頼んでアクトリア王国に住む職人に作らせたものだ。  それを握りしめ、額に当てる。  闘いに向かう時とは違う緊張感。  求婚をするときは戦う時よりも緊張する。そう、仲間の誰かが口にした言葉を思い出す。  全く、その通りだ。胸の高鳴りは落ち着きそうにない。  こんな姿を宗に見られたら情けないと思われてしまいそうだ。

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