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第9話

「小刀と、手紙?」  刃の部分に漢栄の四神である白虎が彫られている。以前、教えてもらったものだ。  手紙はまさか宗からかと、珍しい事をすると見れば、 「俺からじゃない」  と言われ、では誰からなんだと封を開いて中身を取り出して読み始めたが、その相手を知り、あっと声をあげる。 「宗、これ」 「朱玉から頼まれていたんだ」  宗は手紙の内容を知らないそうだ。  広げて読み始める。  朱玉は宗ではなくクレイグに恋をしていた。  自分の命はあまり長くない事を知っていた朱玉は、生きている間だけでいいからクレイグと共に過ごす時間が欲しいかった。  きっと優しいクレイグは同情し、婚姻してくれるだろうと。それだけではない。死んだ後も自分だけを想い続けてくれる、そんな人だということを。  クレイグを同じように好きだった宗もそれを解っていたから、相談したときに彼だけは譲れないといわれた。  それなら、ある条件をのんで欲しいと言い、二人は婚姻をすることとなった。  一、子供を一人作ること。  二、朱玉が死んだ後、宗の方からクレイグに好きだと告白しないこと。ただし、向こうから好きだと言われたら自分の気持ちを素直に応えること。  三、命日にはクレイグも一緒に会いにくること。  だった。  クレイグが宗の事を好きだと知っていて、ずるいまねをし、長い間、またせてしまってごめんなさいと書いてあった。  小刀は二人で選んだもので、求婚された時に共に想いを届けて欲しいとお願いしたそうだ。  二人が婚姻をした理由が自分だったとは。息を深くはき二枚目を読むが、途中であっと目を見開く。 「宗、これはお前宛だった」 「俺に?」  息子が生まれ家族となったあの日から、宗へ対する気持ちの方が大きくなり、クレイグは憧れの人とかわった。  幸せだった。宗と周と共に暮らした日々が、と、書いてあった。 「俺も幸せだった」  同じだ、と、手紙を胸に抱きしめる。 「大切にする。宗も、朱玉の想いも」  剣へ、宗の唇へと軽く触れる位のキスをする。 「クレイグ」  「愛している」  と、今度は深くキスをする。心から嬉しそうな笑顔を見せた。  

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