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第2話

これはアンティークな洋館への興味では絶対にない。 「で、その洋館がどうしたって?」 「この界隈ではもの凄く有名になっているんだとさ。その洋館の中にダテンシが居るってさ」  「堕天使」と漢字変換するまで数秒かかってしまった。ユウトの発音のせいだろう。 「へぇ。その洋館の堕天使ちゃんは何をしてくれるんだ?」  ナッツを飛ばして放物線上に口を動かしてキャッチする。全く信じていないが、イイ話しのネタにはなるだろう。 「一晩一人だけなんだけど、どんな行為でも受け入れてくれるってさ」  ユウトの説明にはビールを吹いてしまった。 「そりゃ何かのデマだろ?もし洋館が有ったとしても、ヤラせてくれるってか?」  ユウトはオレの吹いたビールを顔面でモロに受け止めてしまい、恨めしそうな顔をしてトイレに向かった。 「いや、あながちウソとも思えないし、実際に行ったことがある人も知っている」  俺達の話しの輪には加わらないでカウンターでバーボンを呑んでいた島崎さんがオレの方へと歩いてくる。 「島崎さん、お久しぶりです。御無沙汰申し訳有りません」  島崎さんは昔、大手出版社に勤めていた人で、今はフリーのライターだ。  オレもマスコミ、特に出版社志望なので、この人だけには頭が上がらない。 「いや、洋館の堕天使は本当にいるようだね。夜、館に火が灯ると、合図なんだ。一人限定で一晩中お相手をさせてくれるという」  アンティークな洋館には興味は有った。 「それって、相手の素性を調べて莫大な金を取るとか、または洋館の堕天使とやらがよほど年や顔やスタイルに難点があるとか」  少し伸びた無精ひげを撫でながら、島崎さんは興味深そうな目をした。 「この店ではないがね、他の店では実際に行った人間もいる。年は20くらいで、つやつやな白い顔にクルンと巻き上がった睫毛の下には濡れた大きな目、そして通った鼻筋につやつやの弾けそうな桃色の唇が理想的に配置されているらしいよ。もちろん細身のすらっとしたバランスの良い身体で、とても感じやすい男の子だそうだ。この辺りに立っていれば、10万単位で稼げるくらいの上玉らしい」  オレは喉のひりつくような渇きを覚えてしまってた。  でも上手い話しには裏が有るって言うしな。 「10万単位で稼げるのなら、どうしてタダで、しかもホテル代もかからないのでしょう?話がうさん臭すぎませんか?」

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