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第3話
自分がマイノリティであることも知っている。それを写真とか動画で撮られたらオレの輝かしい――と信じたい――経歴に傷をつけてしまう。
「いや、キチンと裏は取った。一晩しっとりと吸い付くような肌を好きなようにして、二週間経っても脅迫めいた手紙どころか連絡もない。美人局ではないだろうな」
美人局って、たしか美人とそういうことをしている最中に扉が開けられ「亭主」と名乗る男からお金やカード、そしてカードの暗証番号までを聞き取る手段だったはず。
「でも、そんな美味しい話なら島崎さんが行ったらどうですか?」
この店に来ている男は皆同じ性的嗜好の持ち主だ。
島崎さんは残念そうに眉間にシワを寄せた。
「それがね、年齢制限がある。20歳から28歳までなのだよ。出来れば俺が行きたいが流石に無理だ」
島崎さんは実年齢より若い雰囲気だ。本当は50代なんだけど、40代にしか見えない。でも28歳には絶対に見えないだろう。
「晶君なら充分大丈夫だろう?万が一金品を要求して来れば、そのお金は俺が責任を持って支払うし、マスコミに流されたら潰すくらいの力も未だ持っている。それに職業柄顔が広いので、弁護士や晶君が知っているIT企業の社長とも友達だ。ネットで不本意な画像が流されても充分な対処は約束するよ、どうだい?」
やたらに喉が渇いて「ビール」と注文した。
「絶対に迷惑がかからないのでしょうか?」
もし、ネットなんかで画像が流出したらかなりヤバい。でも洋館の堕天使という素敵なフレーズや、島崎さんから聞いた堕天使が誇大広告でなければ、滅茶苦茶好みだ。
どうしようか……行くべきか、行かざるべきかオレがこんなに悩んだことは20年で最初のような気がする。
「あ、気が進まないか?じゃあ、さっきの話しを念書にしてわたすし、ネットに画像が流れたら責任を持って消させて貰う。万が一、高額な請求書が来ても、3億くらいなら何とかなるんだけれどもな」
さ、3億……!ウチもそこそこお金持ちだが、3億を右から左に動かせるかどうかはわからない。やってもたこともないし。
「島崎さんお金持ちだったのですね」
大手出版社は給料が良いので有名だ。でも3億円を貯めることは不可能なハズ。
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