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第4話

「いや、フリーとはいえそこそこの給料は貰っているし、ゆとりを持って生活出来る収入は安定的に見込まれる職業だよ、結構重宝もされているし。  バブル絶頂期に親父が馬鹿でかい土地を持っていてね。それも銀座の一等地とはいわないが、二等地くらいかな。それを最高値で売却したので、自慢じゃないが、金に困ったことはない。さて、どうするね?行って俺に報告するか、この話を他の誰かに振ってみるか」  島崎さんは席を立ちそうだ。 「やってみます。いえ、願いだからやらせて下さい」  慌てて立ち上った拍子にテーブルを足にぶつけてしまい、涙目になって訴えた。  狐につままれた気分のままで島崎さんから教えてもらった住所をカーナビに入力する。  島崎さんはオレの住所とか本名とか大学名を知らせている店では数少ない人の内の一人でもあったし、島崎さんの名刺――フリーのライターなのだから自宅と固定電話、そして携帯番号まで書かれた――も貰っているのでお金とかHの最中の画像流出などの心配は多分ない、ないと信じたい。 「目的地に到着しました」カーナビが無機質な女性の声で知らせる。  さて、どの洋館なんだろう?と運転席から周りを見回そうとしたが、煉瓦製らしき高い塀がずっと続いていて、洋館らしい建物は見えないし、ついでに他の家の門も見えない。昔から高級住宅街として有名な街ではある。大学の友達も数人この街に住んでいる。でも、家や土地自体はそんなに大きくはない。オレが知っている中で最も大きいお屋敷でも土地は100坪しかないと笑っていたっけ。  煉瓦塀の周りを取りあえず徐行運転――多分、自転車の方が早いくらいのスピードだ――をすることにした。店で聞いていたのと同じように灯りが一つ灯っている。ただ、その門も普通の建売住宅にありがちな鉄かなにかを垂直に立てて門としての体裁を作っているだけのものではなくて複雑な模様で相当凝っているし、灯りのランプも見間違いではなければラリックだ。ただ、表札が出ていないことに一抹の不安を感じてしまう。  延々と続く九煉瓦塀や門構えとラリックのランプは滅多なことでは驚かないオレですらビビってしまう。   店を出る前に藤島さんに聞いた合言葉も頭から吹っ飛んでしまいそうなので、呪文のように呟いてから、ランプに照らされたチャイムを押す。

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