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第8話
女執事さんは口元に淡い笑いを浮かべた。
「住所は公表して頂いても構いません。ただ、門から中のことは出来れば、出来ればで、ございますよ、秘密にして頂けると助かりますわ。
表札の件ですが、この屋敷の門をくぐることが出来るのは当家のご子息の許可が下りた方だけなのでございます。出入りの商人や植木屋さんや郵便や手紙の配達人などは裏口から入りますのでそちらには表札が貼ってありますわ」
テレビに出ている有名人とは違って、オレは見かけ上は普通の大学生だ。これだけ本格的なドッキリカメラの線は消えたなと思う。それに見たところお金に困っている風にも全然思えない。
「申し上げても宜しゅうございますか?1つ、この屋敷で起こったことは誰にも洩らさない。2つ、この屋敷の中ではどのように振る舞って頂いても結構ですが、屋敷を出たらお忘れになること。3つ、この家のことは主から『自発的、自発的で御座いますよ!!』仰らない限りはお聞きにならないこと。4つ、主から呼ばれた以外はこの門を再び訪れないこと」
ドアがノックされた。目の前と同じような服装だったが、執事さんは良く見ると絹のブラウスで、二人いるメイドさんは麺のブラウスだった。やはり特別な地位に就いているらしい。
二人のメイドさんは、無表情のままオレの前にアイスティを丁重に置いた。執事さんと同じくお化粧っ気はないが、かなりの美人さんだった。もう一人は重そうな大きなトレーを捧げ持っている。銀色で気になるほどではないものの色が少し異なっている。本物の銀のお皿なのかもしれない。
二人掛りで銀のトレーをテーブルの上に下ろすとサンドイッチが「一体何人分?」と思えるくらいに綺麗に盛り付けられていた。しかもサンドイッチの具は様々でこの屋敷にはコックさんまで居そうだ。
「シェフの心づくしのサンドイッチを召し上がりながらお聞きくださいませ。わたくしの4つのお約束を守って頂けますでしょうか?」
仕掛けが混み入り過ぎて逆に興味を覚えて来た。
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