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第11話

 3つ目は「自発的」と二回繰り返していたので余程重大なことなのだろう。  堕天使様が自ら仰らない限りはオレから何も聞くなということらしい。また「自発的」と発言した女執事さんは舞台で熱演中の女優のような感じだった。オレはしたことがないが、絶頂を極める時をワザと引き伸ばしたり、肝心な部分を手で押さえたりして「イキたかったら、秘密を白状してからだ」とかいうポルノ映画も存在する。ゲイ用のそういうDVDは需要が少ないので男女の絡みのそういう映画以上に製作費は安いと聞いている。だから凝った脚本なんて書けるわけもなく、ただやっているだけというのが多いけど、男女の絡みのDVDなどを大学の同級生――もちろん男しか呼ばない――で鑑賞する機会はしぶしぶ付き合っている。出演している女優さんは美人でスタイルも良いけれど、それに絡む男優は男の夢を叶えるためか、若くても冴えない不細工なサラリーマンとか、禿ていて腹部も三段腹で足も短いとかそういう男優さんだ。そういうDVD――特にサド系と呼ばれるもの――には時々そういうシーンもある。だから、無理やり言わせないようにと太い釘を刺した積もりなのだろう。  ただ、あの肖像画の主が実物より五割減くらいだったとしても、普通の女優さんと映画に出演したらアダルトではなく一般映画で充分に通用するレベルだろう。Hシーンが有ったらうっとりとして相手の女優さんなんかは完璧無視して肖像画の主の素肌に食い入るように見入ってしまうことは請け合いだ。  4つ目のお願いというより口調は命令だったが、不可解だ。なじみの店で聞いたのは「一回だけの極上の美青年とのHだったハズで、二回目はないと聞いている。それなのに女執事さんは二回目もあるかのような口ぶりだった、  ストーカー対策なら逆効果でしか有り得ない。もう一度お手合わせをしたいと思う人間ならこれだけの敷地を持つ洋館で住所も分かっている。表札が掛かっていないのは女執事さんの説明通りかも知れないし、名字を隠すためかも知れないが洋館の場所はバレバレなわけで、希望的観測を持って押しかけて来る男にさらに希望を与えるのが関の山だ。  緊張のあまりかむやみに喉が渇く。アイスティに砂糖を入れ過ぎたせいもあったかも知れないが。

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