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第25話
目を閉じていてもハッキリと分かる長い睫毛に涙の雫が煌めいている。甘く蕩けた心と身体が満たされた淫らな天使の笑みを浮かべる姿はとても背徳的で、そして征服欲をそそられる。
深雪は条件を守る限り嘘はつかないような気がする。普通なら隠しておきたい類の過去の経験もあからさまに語っていたのも事実だ。
「初めて……とは、とても光栄だな。しかし、深雪の弱点を他の男は衝かなかっただけじゃないのか?一晩中、挿れ通しのヤツも居たのだろう?そいつなら絶対に分かったはずなのに、な?」
どんなに深雪が聖なる淫らさを兼ね備えた、つい押し倒したくなる魔性の美しさの持ち主でも、床でコトに及ぶのは酷だったような気がして、絹糸のような湿った髪を梳くことにする。毛足の長い絨毯なので、背中に傷はつけていないはずだ。
身体にキスマークは付けるなという不思議な条件を提示されているので、傷もマズいような気がしてきた。
「晶の……形とか……硬さだとか……。そういう全部が重なった結果じゃないかな?こんなに感じたのは」
左手は繋いだままにして、右手で長い前髪を掬い上げては紅色に上気した肌へと落とす。深雪の全体的な気高さを保ちながら堕ちた天使の雰囲気からはキスと表現するよりも、接吻と呼ぶ方が相応しい行為を繰り返す。
「深雪の中だって……、物凄く気持ちが悦いもんな……。挿れ放しにしたい気持ちも、とても良く分かる」
接吻の合間に言葉を紡いでいると、深雪はダイアモンドの粒を散らせた扇のような睫毛をゆっくりと開く様子もとても魅惑的だった。潤んだ茶色の大きな目が不思議そうな光を湛えている。
「どうして……、次を直ぐに始めないの?」
最初の時に感じた気怠げで、どこか投げやりな声や表情ではなく、聖なる無邪気さすら感じられる。
「知らないのか?これは行為の後の戯れってヤツだ。情事はコミュニュケーションの究極の形という側面も持っているからな。お互い愉しめないと意味がないだろう?」
大きな目がお月様のように見開かれる。その潤みの帯びた綺麗な目の光がシャンデリアのオレンジの光と相俟って煌めきを深めた。
「そういう……もの……なの?僕にとっては……通過儀礼にしか……過ぎないのだけれども……。でも、何だか……とても……気持ちいい……」
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