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第28話

 綺麗に顰められた眉が苦しそうに歪んだのを見て絡めた唇を断腸の思いで離すことにした。  接吻の深さの余韻のオレンジ色の小さな橋がお互いの唇を繋いでいる。深雪の神聖さすら感じられる容貌とは異なって甘く乱れた呼吸を繰り返す開いた唇はとても淫らで人間的な魅力に溢れている。  晶は経験上、深い接吻の間も浅く呼吸をしていたが、深雪が息を止めていたのも分かっている。華奢な肩が大きく動き、深い呼吸をしている様子も晶のどこか達成感も抱いてしまう。 「普通はさ、こういうキスから始めるものなのだぜ?接吻の最中に少しだけ唇をずらして息をする」  深雪の目が驚いたように見開かれた。 「そう……なんだ?晶だけが……特別だと思って……いた。僕の部屋に……来た人達は、いきなり……ココに……挿れようと……」  深雪の下半身が小刻みに揺らされた。ココというのは晶と繋がっている部分ということだろう。その動きが精妙すぎて、晶の欲望も加速する。 「それはさ、深雪が魅力的過ぎるし、一晩きりという条件を付けたからじゃないのか?だからキスは省略されたのだと思う。普通に付き合えば、最初の日はキスだけで終わるってことも良くある。たださ、深雪の場合、いつもこんな夜着で迎えるんだろう?それに胸は熟した野苺のように紅くさせて、さ」  男女の普通と、同性同士の普通が違っていることくらい晶も知っている。同性同士が普通なのかはさて置き、男女の間だと最初の日にキスすら出来ないこともあるということは、深雪には言わない方がいいだろう。そういう俗なことを封殺する荘厳さも深雪の魅力の一つだ。  胸の可憐で貪欲な飾りを強く捻る。 「んっ……。それが……我が屋敷の……習わしだから……。僕は……従うしか……ない。それに……、胸の粒は……誰に……弄られても……感じる。普通は……そうじゃ……ないの?」  深く聞かない方が良いのだろうと思う。通過儀礼とか習わしとか随分と不思議な単語が深雪の魅惑的極まりない唇から紡がれたが、この豪奢極まりない洋館や、その奥に住むに相応し過ぎる美貌と風格の持ち主の深雪を見て、そしてその肢体と繋がっているとなおさら非日常な感じを受ける。

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