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第40話

アザやホクロなんて珍しいものではないハズだし、充分自分で見える範囲に存在するのだから。不審に思いながら指で指し示すと、深雪は今までとは異なった神妙そうというかとても複雑な彩りを帯びた目を晶に当ててから、晶の指の方を慌てて確かめている。  何だか怪我でもしたみたいな勢いなのが気になった。 「本当だ。僕の身体にも、ちゃんと現れた……。やっと……」  深雪が指と目で碧い綺麗なアザを確認しながら、感慨無量といった感じの震える声で不思議な言葉を紡ぐ。 「『やっと』……って?」  白い肌にとてもよく映える綺麗な紫がかった碧い色と形をしていたが、深雪の身体に元からあったものではないのだろうか。  深雪の秀麗な顔を上げると、大きな目からは透明な涙の雫が滴っている。そしてどこか喜びのオーロラめいた感情が身体全体から薫り立つようだった。  とても無垢で清らかな涙の雫を晶の指で掬い取った。 「本当に、有るよね。まだ、信じられない。晶を迎え入れる前には、僕の身体にこんなアザは無かった」  意外な言葉に大きく目を開いてしまう。 「行為が終わった後で、身体をじっくり見るという条件や、キスマークを残すなっていうのと関係があるのか?」  提示された時には不思議な条件だとは思ったが。 「そうだよ。我が家では、主人の証として身体のどこかにこの形が現れる。その通過儀礼がやっと終わった。これも、晶のお蔭だ……よ?」  感激に震える声はとても綺麗だった。天使以上に妙なる響きのような。  通過儀礼が毎晩見知らぬ男に肌を開くこと、なのだろう。  たしかに、淫らな罪で天使の位を剥奪されて、純白の羽根をむしり取られたような深雪の熟した妖艶な肢体も、そしてソノ時の顔もとても妖艶だった。しかし、深雪にはこちらの方がとても相応しい。 「そうなのか。この色と形はとても深雪には相応しい綺麗なものだけれど、そんなに深い意味が有ったのか」  深雪が伸びあがって唇を重ねてきた。涙で煌めく大きな瞳がとても印象的だった。

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