「僕の部屋に、来てくれる？」 　「通過儀礼は終わった」と言っていたのに、まだ誘ってくれるとは思ってもみなかった。 「良いのか？屋敷の皆が待ち構えているのだろう？深雪が通過儀礼を終えるのを」 　この都心に有るとは到底思えない豪奢な洋館はどんな不思議が隠されていてもおかしくない神秘的な雰囲気を醸し出している。 　そして、深雪の天使長めいた神聖な雰囲気はこの洋館の主人に相応しい。 　大粒の涙が煌めく綺麗な瞳に魅入られながら、辛うじて自制する。 「うん。晶がまだ僕を抱いてくれる気持ちが有るなら、来て欲しい。屋敷の皆には明日の朝に報告すれば良いことだ。僕が主人の資格を得たことは」 　天使めいた清らかな肢体に堕天使の淫らさが仄見える深雪の素肌を強く抱き締めた。 「深雪、深雪を抱きたいよ。一晩中でも」 　女執事に提示された条件では、深雪側の要望が有れば屋敷に通って来ることは可能そうな言いぶりだったが。ただ、主人となる資格を得たとかいう深雪にその気が有るかどうかは別問題だ。 「うん。僕も晶に抱かれたい。それに見せたいものもある。晶の目で確かめて。そして、晶に言いたい言葉もあるのだけれど、その前に晶を素肌の奥でも感じたい。感じさせて……」 　深雪の素肌が晶のシャツ越しに密着する。胸の野苺の可憐で硬い感触もとても扇情的だ。 「ああ、深雪が望むなら何度でも。見せたいものって？」 　お互いの唾液で艶やかに濡れた深雪の唇が綺麗な極上の笑みを形作った。至近距離で煌めく深雪の瞳は堕天使の妖しさを揺らめかせていたが。 「ベッドに来て貰えば、分かるよ。晶の目でも確かめてもらいたい。ね、来て。こっちだよ」 　色香の他には何も纏っていない深雪のスラリとした肢体はとても神秘的な魅力を放っている。 　晶の手に絡めた指が恋人繋ぎの形を作った。一番右と言っていたハズなのに、優美な動きの深雪は左側へと晶を誘導する。 「右側と言ってなかったか？深雪のベッドルーム」 　不思議に思って深雪の美しい顔を見下ろした。